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通勤手当から在宅勤務手当にすることで消費税額や社会保険料への影響は?

働き方改革の一環としてリモートワーク(テレワーク・在宅勤務)を推進する企業が増えています。在宅勤務によって通勤定期代の実費精算がなくなるため通勤手当を廃止し、家庭の光熱費や通信費を補うために在宅勤務手当を支給する場合、消費税や社会保険にどのような影響があるのでしょうか。

給与の支払いを受ける側の違いについては下記のページをご覧ください。

通勤手当と在宅勤務手当で源泉所得税や社会保険料、残業手当が変わる?
働き方改革の一環としてリモートワーク(テレワーク・在宅勤務)を推進する企業が増えています。在宅勤務によって通勤定期代の実費精算がなくなるため通勤手当を廃止し、家庭の光熱費や通信費を補う在宅勤務手当を支給する場合、税務や社会保険の観点から給与...

消費税

通勤手当と在宅勤務手当では、消費税の課税に大きな違いがあります。

通勤手当については、消費税法基本通達によって次のように取扱うこととされています。

通勤手当

事業者が使用人等で通勤者である者に支給する通勤手当(定期券等の支給など現物による支給を含む。)のうち、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う。

(消費税法基本通達11-2-2)

事業主が支給する通勤手当は、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れに該当するものとして取り扱われます。これは、通勤手当が通勤定期代という実費の補填だからです。

消費税の課税事業者(原則)の場合、仕入税額控除の対象となるので、売上で預かった消費税からこの通勤手当に係る消費税を差し引くことができます。

一方、住宅勤務手当については、実費の補填ではなく給与の一部とされます。消費税法上、給与は次のように定められています。

給与等を対価とする役務の提供

法第2条第1項第12号《課税仕入れの意義》の規定により、課税仕入れの範囲から除かれる「給与等を対価とする役務の提供」とは、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき給与等を対価として労務を提供することをいうのであるが、この場合の給与等には、俸給、給料、賃金、歳費、賞与及びこれらの性質を有する給与のほか、過去の労務の提供を給付原因とする退職金、年金等も該当することに留意する。

(消費税法基本通達11-1-2)

このように、在宅勤務手当という名目の給与は不課税取引に該当しますので、消費税は課税されません。

したがって、事業主側からみれば、通勤手当のほうが消費税の納税額が少なくなるのです。

 

社会保険料

次に、社会保険料(厚生年金保険、健康保険、労災保険)について通勤手当と在宅勤務手当に相違はあるのでしょうか。

厚生年金保険・健康保険

厚生年金保険と健康保険は、事業主と被保険者で折半して納付しますので、給与や手当の額によって納付額に影響します。

厚生年金保険と健康保険の対象となる給与は「報酬」と呼ばれますが、この「報酬」の定義は、厚生年金保険法および健康保険法によって次のように定められています。

報酬 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。

(厚生年金保険法第3条3項)

賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。

(健康保険法3条5項)

つまり、通勤手当であっても在宅勤務手当であっても、その名称を問わず労働の対償とされるので、厚生年金保険料および健康保険料の算定の基礎となる「報酬」の対象となります。

なお、通勤手当から在宅勤務手当に切り替え、固定的賃金に変動があったときは、随時改定の対象となる場合があります。

 

労災保険

労働保険(労災保険)において、保険料の対象となる給与のことを「賃金」と呼びます。この「賃金」の定義は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律によって次のように定められています。

賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいう。

(労働保険の保険料の徴収等に関する法律第2条2項)

つまり、通勤手当であっても在宅勤務手当であっても、その名称を問わず労働の対償とされるので、「賃金」に算入して労災保険料を計算し、納付することになります。

割増賃金

労働基準法では、労働者が時間外労働や休日労働(残業)をしたときに事業者は割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。

割増賃金の基礎となる賃金には、基本給だけでなく諸手当も含まれますが、次の7つの賃金は、割増賃金の計算する上で算入しないこととされています。

【割増賃金の計算の基礎から除外するもの】

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

したがって、通勤手当は上記7項目の賃金に含まれるので、割増賃金を計算する上で除外されますが、在宅勤務手当は7項目の賃金に含まれませんので、割増賃金の計算の基礎に含める必要があります。

割増賃金の金額が増加することで報酬月額が増加したときなどは、社会保険料の算定基礎や随時改定により、社会保険料が上がる場合があります。

 

まとめ

通勤手当在宅勤務手当
消費税仕入税額控除の対象仕入税額控除の対象外
健康保険料報酬の対象報酬の対象
厚生年金保険料報酬の対象報酬の対象
労災保険料賃金の対象賃金の対象
割増賃金割増賃金の計算の基礎から除外割増賃金の計算の基礎に算入