通勤手当と在宅勤務手当で源泉所得税や社会保険料、残業手当が変わる?

働き方改革の一環としてリモートワーク(テレワーク・在宅勤務)を推進する企業が増えています。在宅勤務によって通勤定期代の実費精算がなくなるため通勤手当を廃止し、家庭の光熱費や通信費を補う在宅勤務手当を支給する場合、税務や社会保険の観点から給与計算上の注意点はあるのでしょうか。

源泉所得税

通勤手当と在宅勤務手当では、所得税の課税に大きな違いがあります。

所得税法上、給与のうち次のような手当は非課税とされています。

  • 通勤手当(一定金額以下)
  • 転勤や出張などのための旅費(通常必要と認められるもの)
  • 宿直や日直の手当(一定金額以下のもの)

つまり、非課税とされる範囲に含まれる通勤手当は、所得税が課税されません。一方、在宅勤務手当の場合、非課税とされる規定はありませんので、所得税の課税対象となります。

 

社会保険料

次に、社会保険料(厚生年金保険、健康保険、雇用保険)の徴収について通勤手当と在宅勤務手当に相違はあるのでしょうか。

厚生年金保険・健康保険

厚生年金保険と健康保険の対象となる給与は「報酬」と呼ばれますが、この「報酬」の定義は、厚生年金保険法および健康保険法によって次のように定められています。

報酬 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。

(厚生年金保険法第3条3項)

賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。

(健康保険法3条5項)

つまり、通勤手当であっても在宅勤務手当であっても、その名称を問わず労働の対償とされるので、厚生年金保険料および健康保険料の算定の基礎となる「報酬」の対象となります。

なお、通勤手当から在宅勤務手当に切り替え、固定的賃金に変動があったときは、随時改定の対象となる場合があります。

 

雇用保険

労働保険(雇用保険)において、保険料の対象となる給与のことを「賃金」と呼びます。この「賃金」の定義は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律によって次のように定められています。

賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいう。

(労働保険の保険料の徴収等に関する法律第2条2項)

つまり、通勤手当であっても在宅勤務手当であっても、その名称を問わず労働の対償とされるので、「賃金」に算入して雇用保険料を計算することになります。

割増賃金(残業手当)

労働基準法では、時間外労働や休日労働(残業)をさせたときに割増賃金(残業代)を支払うことを事業主に義務付けています。

割増賃金の基礎となる賃金には、基本給だけでなく諸手当も含まれますが、次の7つの賃金は、割増賃金の計算する上で算入しないこととされています。

【割増賃金の計算の基礎から除外するもの】

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

したがって、通勤手当は上記7項目の賃金に含まれるので、割増賃金を計算する上で除外されますが、在宅勤務手当は7項目の賃金に含まれませんので、割増賃金の計算の基礎に含める必要があります。

 

手取り額が変わってくる

通勤手当と在宅勤務手当が同じ金額であっても、上記の違いによって手取り額が異なってきます。通勤手当10,000円を在宅勤務手当10,000円に切り替えた場合、どのような違いがあるのか例をみてみましょう。

【例】基本給300,000円、時間外労働20時間(月所定労働日数22日、日所定労働時間8時間)の場合

通勤の場合在宅勤務の場合

基本給300,000300,000
諸手当通勤手当 10,000在宅勤務手当 10,000
割増賃金34,08035,220
支給計344,080345,220



厚生年金保険料29,28029,280
健康保険料15,79215,792
雇用保険料930930
源泉所得税7,9208,420
控除項目計53,92254,422
差引(手取り額)290,158290,798

社会保険料(厚生年金保険・健康保険・雇用保険)は変わりませんが、割増賃金の計算結果が変わり、源泉所得税は諸手当と割増賃金の計算に変更があったため金額が異なります。

この例では社会保険料の額に変更はありませんが、割増賃金の金額が増加することで報酬月額が増加したときなどは、社会保険料の算定基礎や随時改定により、社会保険料が上がる場合もあります。

 

まとめ

通勤手当在宅勤務手当
源泉所得税課税されない課税される
健康保険料報酬の対象報酬の対象
厚生年金保険料報酬の対象報酬の対象
雇用保険料賃金の対象賃金の対象
割増賃金割増賃金の計算の基礎から除外割増賃金の計算の基礎に算入

 

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