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帳簿上の収入額と支払調書の金額が合わないときの確定申告書(所得の内訳)の記載

作家やデザイナー、講演活動を行う事業者が、原稿料や講演料等の「源泉徴収の対象となる報酬・料金等」を受け取ったとき、「帳簿上計算した収入」と「支払調書に記載された金額」が合わないことがあります。

なぜこのようなことが起こるのか、また、確定申告書に記載すべき金額はどちらが正しいのでしょうか?

帳簿と支払調書が合わない理由

帳簿上の収入額と支払調書の金額が合わない理由には、青色申告者は、売上が発生した日で収入を認識(発生主義)していますが、支払調書は支払日ベース(現金主義)で記載されているためです。

発生主義で支払調書を作成する会社もありますが、多くは支払日をもとにして作成されます。

 

仮に×1年から×2年にかけて、毎年6月と12月に次のような仕事をしたとします。(入金は売上月の翌月)

【具体例】×2年の確定申告書を作成する(源泉所得税率10.21%)

年月売上入金備考
×1年12月10,000円
×2年1月売上10,000-源泉所得税1,021=8,979円(×1年12月分売上)
×2年6月15,000円
×2年7月売上15,000-源泉所得税1,531=13,469円(×2年6月分売上)
×2年12月12,000円
×3年1月売上12,000-源泉所得税1,225=10,775円(×2年12月分売上)

支払調書(現金主義)

支払調書は支払いがあった時点で認識しますので、入金の列で収入を集計します。

収入:(×2年1月入金分)10,000+(×2年7月入金分)15,000円=25,000円

源泉徴収税額は、上記の収入から差し引いた源泉所得税額を集計します。

源泉徴収税額:1,021+1,531=2,552円

帳簿上(発生主義)

帳簿上(発生主義)は、売上が発生した時点で認識しますので、売上の列で集計します。

収入:(×2年6月売上分)15,000+(×2年12月売上分)12,000円=27,000円

源泉徴収税額は、上記の収入に対する源泉所得税額になります。

源泉徴収税額:1,531+1,225=2,756円

 

このように、売上月と入金月が異なる場合、支払調書の金額に誤差が生じることになります。

収入額源泉徴収税額
支払調書(現金主義)25,000円2,552円
帳簿上(発生主義)27,000円2,756円

確定申告に記載すべき金額

では、確定申告書に記載する金額は、帳簿上の収入金額と支払調書の金額のどちらを記載すべきでしょうか?

青色申告者の場合、現金主義の所得計算による旨を届け出ていない限り、発生主義で計算した帳簿上の金額を申告しなければなりません。

よって、確定申告書第二表の「所得の内訳(源泉徴収税額)」欄には、発生主義で計算した下記の金額を記入します。

〇正しい例

収入金額・・・27,000円
源泉徴収税額・・・2,756円

なお、帳簿に計上する「預け金」は支払日で計上するため実際に控除された1,021+1,531=2,552円となります。そのため、確定申告書の源泉徴収税額を2,552円と記入しがちですが、あくまでも左欄の収入金額に対する源泉徴収税額ですので、収入金額に10.21%をかけた金額になるべきです。(例外もあります。また端数処理の関係で数円の誤差が生じることがあります。)

×間違った例

収入金額・・・27,000円
源泉徴収税額・・・2,552円

支払調書の添付

支払調書の添付は源泉徴収票とは違って義務ではありませんが、添付する場合、所得の内訳書と支払調書の金額が異なることに不安な方は、誤差を説明できるのであれば、所得の内訳書の空いたスペースや支払調書に金額が異なる理由をコメントを書いておくと良いでしょう。

理由の一例「所得の内訳は発生主義で計上していますが、支払調書は現金主義のため金額が異なります」など。