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年次有給休暇の時季指定のまとめとポイント!5日取得させなかった会社の罰則は?

2019年4月より、年次有給休暇が10日以上付与される労働者には、年5日の有給休暇を確実に取得させることが使用者に義務付けられました。これを「時季指定」といいますが、労働基準法39条7,8項において定められています。

このページでは、時季指定の義務についてくわしく解説しています。

 

時季指定の対象となる労働者

法定の年次有給休暇日数が10日以上のすべての労働者が対象です。

対象労働者は、正社員だけでなく、管理監督者や有期雇用労働者、短時間労働者も含まれます。

 

アルバイトやパートタイマーなどの短時間労働者の時季指定権の発生については、付与される年次有給休暇日数が10日となった時点から年5日の有給休暇を取得させる必要があります。

週所定労働時間30時間未満、かつ週所定労働日数4日以下の短時間労働者には、その所定労働日数に比例した日数の年休の付与(比例付与)が義務付けられていますが、例えば、週所定労働時間が28時間で、かつ週所定労働日数が4日のパートタイマーが3年6ヶ月継続勤務した際に10日の年休が付与されます。その付与した日(基準日)から、当該労働者は時季指定権の対象者となります。

 

所定労働日数 勤続年数
年間 6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月
通常の労働者 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

 

時季指定のポイント

時季指定の概要

使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に「労働者自らの請求」「計画的付与」「時季指定」のいずれかの方法で5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。(労働基準法第39条第7,8項)

 

【例】

入社日:×1年4月1日 年次有給休暇付与日(基準日):×1年10月1日 付与日数:10日

基準日の×1年10月1日から×2年9月30日までの1年間5日年休を取得させる必要があります。

 

5日を超える時季指定はできる?

労働者が自ら請求して取得した日数や、労使協定で計画的に取得日を定めて与えた日数(計画的付与)については、その日数分を時季指定義務の5日から控除する必要があります。

つまり、「労働者自らの請求」「計画的付与」「時季指定」のいずれかの方法で既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得済みの労働者に対しては、年休の合計日数が5日に達した時点で使用者による時季指定は不要であり、することもできません。(労働基準法第39条第8項)

【例】

  • 労働者が自ら5日取得した場合 ⇒ 使用者の時季指定は不要
  • 労働者が自ら3日取得+計画的付与2日の場合 ⇒ 使用者の時季指定は不要
  • 労働者が自ら3日取得した場合 ⇒ 使用者は2日を時季指定
  • 計画的付与で2日取得した場合 ⇒ 使用者は3日を時季指定

 

時間単位年休や半日単位年休との関係

時間単位年休については、使用者による時季指定の対象はなりません。労働者が自ら時間単位年休を取得した場合にも、その時間分を5日から控除することはできません。

半日単位での取得の希望があった場合には、年次有給休暇の時季指定を半日(0.5日)単位で行うことは問題ありません。

(平成30年12月28日基発1228第15号)

 

時季指定の方法

使用者は、有給休暇の時季指定により付与するに当たっては、労働基準法の規定により有給休暇を与えることを労働者に明らかにした上で、労働者の意見を聴かなければなりません。
また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。(労働基準法施行規則24条の6)

 

年次有給休暇管理簿の作成と保存

使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、年次有給休暇を与えた期間(基準日から1年間)とその期間満了後3年間は保存しなければなりません。(労働基準法施行規則24条の7)

年次有給休暇管理簿は、時季・日数・基準日を労働者ごとに明らかにした書類であり、労働者名簿または賃金台帳とあわせて調製しても差し支えありません。

 

就業規則への記載

休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者が時季指定を行う場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲および時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要があります。

使用者による時季指定を行う場合において就業規則に記載していない場合、労働基準法第89条違反となり、使用者に対し30万円以下の罰金が科せられます。

 

違反した場合の罰則は?

労働者に対し年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第39条第7項(使用者による時季指定)の規定に違反することになり、使用者に対し30万円以下の罰金が科せられます。この罰則は、対象となる労働者1人につき1罪として取り扱われます。

ただ実際には、まず是正に向けて労働基準監督署の監督指導が行われ、改善を図っていくこととされています。

 

まとめとポイント

  • 年次有給休暇日数が10日以上のすべての労働者に対し、基準日から1年間のうちに5日取得させなければならない。
  • 10日以上あれば、管理監督者や有期雇用労働者、短時間労働者も含まれる。
  • 5日以上の年次有給休暇を請求・取得済みの労働者に対しては、時季指定をすることができない。
  • 時間単位年休は、時季指定の対象にならない。
  • 半日(0.5日)単位は、時季指定の対象になる。
  • 労働者の意見聴衆の義務と聴取した意見を尊重する努力義務がある。
  • 年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存が必要。
  • 時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければならない。