労働基準局長通達(昭和47年9月18日基発第602号)において、「労働安全衛生法の規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然事業者が負担すべきものであること。」とされています。
健康診断にかかる費用は会社負担
事業主は労働者の安全配慮義務があるため、常時使用する労働者に健康診断を行わなければならず、その健康診断に要した費用についても会社が負担すべきものであるとの通達があります。
ただし、次のような検査費用は、必ず会社が負担すべきものとは解釈されません。
- 法定項目以外の検査
- 二次検査(再検査・精密検査)
法定項目以外の検査にかかる費用
例えば、1年以内に1回定期に行わなければならない定期健康診断には、次の法定の検査項目があります。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
この法定検査項目は、必ず実施されなければならないものですが、労働者が自らの希望でこれらの検査項目以外に追加のオプション検査や人間ドックを受診した場合は、その法定検査項目以外の部分にかかる費用は会社が支払うべきものではないので、労働者の負担としても問題ありません。
二次検査(再検査・精密検査)にかかる費用
実施した健康診断の結果、労働者の健康状態に何らかの問題がある、またはその可能性が高いと診断された場合、再検査や精密検査などの二次検査の指示が出るケースがあります。
二次検査については診断の確定や症状の程度を明らかにするものであり、一律には会社に義務付けられているものではないので、法律上は二次検査にかかる費用を会社が負担する必要はありません。
ただし、事業者は労働者の健康を確保する義務があり、できる限り労働者の健康状態に基づいて就業上の措置を行うことが適当であるとされるので、二次検査費用を会社が支払い、労働者に再検査・精密検査の受診を勧奨するよう配慮することが望ましいです。(参考「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)
※特殊健康診断として規定されているものについては、事業者にその実施が義務付けられているので二次検査費用についても会社の負担とすることが当然です。
交通費実費の負担は?
会社が負担すべき健康診断に要する費用には、受診医療機関への移動のための交通費等も含まれると解されますので、健康診断の実施が義務とされている以上、労働者の自宅または勤務先から医療機関までの実際にかかった交通費も会社が負担することが望ましいと考えられます。
ただし、労働者が自分で決めた医療機関で健康診断を受診する場合で、その医療機関が自宅または勤務先から遠方であるなど、健康診断に要する費用として合理的な理由のないものは、会社が支払う必要はありません。
健康診断中における賃金については、下記ページをご覧ください。
