被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、7日の待期期間の満了後、1ヶ月以上3ヶ月以内の間で公共職業安定所長の定める期間、失業保険(失業等給付の基本手当)を支給しないとされています。(雇用保険法第33条)
この1ヶ月以上3ヶ月以内の期間を「給付制限期間」といいますが、この期間は失業の認定が行われないので、基本手当のみならず、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当も支給されません。この期間を過ぎ、失業の認定が行われると基本手当を受給することができます。
給付制限期間は、離職することになった理由によって、長さが変わります。
自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合
給付制限期間
従業員の故意、過失またはこれと同視すべき事由によって解雇された場合の給付制限期間は、以下のとおりです。
| 原則 | 3ヶ月 |
| ・受給資格の決定を受けた者が、待期が満了しないまま就職し雇用保険被保険者となり、2ヶ月以上経過した後、新たな資格を取得することなく再就職した場合
・2回以上再離職を繰り返し、かつ、新たな受給資格を取得することがない場合であって、雇用保険被保険者として雇用されていた期間が合算して2ヶ月以上ある場合 |
1ヶ月 |
いわゆる懲戒解雇によって解雇された場合には、原則3ヶ月は基本手当が支給されません。
認定基準の例示
原則3ヶ月の給付制限を受けることとなる「自己の責めに帰すべき重大な理由」には、以下のようなものがあります。(雇用保険に関する業務取扱要領52202)
①刑法に規定する犯罪や行政罰の対象となる行為を行った
例えば、自動車運転手が交通取締規則に違反するなどもこれに含め、執行猶予中の者も該当します。
犯罪の対象については、刑が確定しているか否かで判断することになります。単に訴追を受けたり取り調べを受けているだけであったり、控訴または上告中で刑が確定していない場合、また起訴猶予の処分を受けたものについては刑が確定していませんので、該当しません。
②故意または重過失により会社の設備器具等を破壊した
故意または重過失に基づくものであって、事業主に対して損害を与えた場合に該当します。
③故意または重過失によって会社の信用を失墜せしめ、または損害を与えた
被保険者である従業員の言動によって、会社に金銭的物質的損害を与えたり信用の失墜、顧客の減少など無形の損害を与えたことなどが該当します。
④労働協約や就業規則に違反した
労働協約や就業規則に定められた事項は、従業員が守るべきものであり、規則に違反したことによって解雇された場合には、④以外の基準に該当しない場合であっても自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇と認められることがあります。
違反の程度が軽微な場合には該当しませんが、解雇予告および解雇予告手当支払いの義務が免除されるような次の行為が、これに該当します。
・極めて軽微なものを除き、事業所内において、窃盗・横領・傷害等刑事犯に該当する行為があった
・賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の従業員に悪影響を及ぼす行為があった
・長期間正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない
・出勤不良または出欠常ならず、数回の注意を受けたが改めない
⑤事業所の機密を漏らした
会社の製品、技術等の機密や経営状態、資産等、事業経営上の機密を漏らした場合に該当します。
⑥会社の名をかたり、利益を得、または得ようとした
会社に損害を与えない場合でも詐欺罪、背任罪が成立する場合も該当します。
⑦他人の名を詐称し、または虚偽の陳述をして就職をした
就職条件を有利にするために他人の履歴を盗用し、または経験、学歴詐称など経歴を偽って採用され、後に発覚した場合などが該当します。
正当な理由なく自己の都合により退職した場合
給付制限期間
正当な理由がない自己都合退職の場合の給付制限期間は、以下のとおりです。
| 原則 | 2ヶ月 |
| ・受給資格の決定を受けた者が、待期が満了しないまま就職し雇用保険被保険者となり、1ヶ月以上経過した後、新たな資格を取得することなく再就職した場合
・2回以上再離職を繰り返し、かつ、新たな受給資格を取得することがない場合であって、雇用保険被保険者として雇用されていた期間が合算して1ヶ月以上ある場合 |
1ヶ月 |
| 退職した日からさかのぼった5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己の都合により退職している場合 | 3ヶ月 |
正当な理由なく自己都合退職した場合には、原則2ヶ月は基本手当が支給されません。
自己都合退職でも給付制限をなくすには?
自己都合退職であっても、離職したことに正当な理由がある場合には、給付制限がなくなります。
「正当な理由」とは、被保険者の状況(健康状態、家庭の事情等)、事業所の状況(労働条件、雇用管理の状況、経営状況等)その他からみて、その退職がやむを得ないものであることが客観的に認められる場合であって、退職者の主観的判断は考慮されません。
退職するにあたって正当な理由があると認められ、給付制限を受けない場合には次のような事柄があります。(雇用保険に関する業務取扱要領52203)
① 事業所の倒産がほぼ確実となった
② 大量または相当数の人員整理が行われた
③ 適用事業所が廃止された(事業活動が停止し、再開見込みのない場合を含む)
④ 賃金、労働時間、労働内容等の採用条件と労働条件が著しく相違した
⑤ 支払われた賃金が賃金月額の2/3に満たない月があった、毎月支払われるべき賃金の全額が所定の期日より後に支払われた
⑥ 支払われていた賃金に比べて85/100未満に低下した
⑦ 離職の日の属する月の前6ヶ月間に、一定以上の期間において一定以上の時間外労働および休日労働が行われた
⑧ 職種転換等に際し、職業生活継続のために必要な配慮を行っていないため雇用契約の終了を余儀なくされた
⑨ 上司、同僚等から嫌がらせ等を受けた
⑩ 退職勧奨、希望退職者の募集に応じて退職した(結婚、妊娠、出産、育児に伴い退職することが慣行となっている、定年制があるにもかかわらず定年年齢の前に早期退職することが慣行となっているなど、環境的に離職することが期待され、離職せざるを得ない状況に置かれた場合も該当します)
⑪ 全日休業により休業手当の支払いが3ヶ月以上にわたった
⑫ 事業内容が法令に違反する
⑬ 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等によって退職した
⑭ 妊娠、出産、育児等により退職し、受給期間延長措置を90日以上受けた
⑮ 家庭の事情が急変した(父母の死亡、疾病、負傷等のために退職を余儀なくされた、など)
⑯ 配偶者または扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となった(家庭生活や経済的事情により別居が困難となり同居するために通勤が不可能または困難な地へ転居した、など)
⑰ 居所の移動、事業所の移転、公共機関の廃止または運行時間の変更などにより通勤不可能または困難となった
⑱(船員に限る)船舶の国籍喪失、定年以外の雇用期間の満了、定年退職
※「正当な理由がある」と認められる場合とは、「特定受給資格者」または「特定理由離職者Ⅱ」と認められる場合とほぼ同様です。

上記の理由によって退職した場合には、自己都合退職であっても給付制限がなくなりますので、退職後失業保険受給の手続きの際にハローワークに申し出ましょう。「正当な理由」の認定には、退職者の主観的判断ではなく客観的事実がなければなりませんので、証明となる書類が必要な場合があります。
このとき、離職票に記載された離職理由と異なっていても、客観的事実により「正当な理由がある」と認められれば、給付制限が免除されます。
