雇用保険の被保険者が離職し失業の状態にある場合、一般的に「失業保険」や「失業手当」と呼ばれる「失業等給付の基本手当」を受給しながら就職活動をすることができます。
この基本手当は、離職理由によって、基本手当を受給するための要件が緩和されたり、給付が開始されるまでの給付制限の免除、基本手当を受給できる所定給付日数が変わってきます。
受給資格者の区分と違い
基本手当の支給を受けることができる受給資格者には、離職理由によって主に次の4つの区分に分けられ、離職理由や受けられる優遇に次のような違いがあります。
| 受給資格 | 退職理由 | 被保険者期間の条件 | 給付制限 | 所定給付日数 |
|---|---|---|---|---|
| 特定受給資格者 | 倒産、解雇等 | 離職日以前1年間に 被保険者期間が6ヶ月以上 |
なし | 後述②の表 (最長330日) |
| 特定理由離職者Ⅰ | 希望に反して 契約更新がなかった |
離職日以前1年間に 被保険者期間が6ヶ月以上 |
なし | 後述②の表 (最長330日) |
| 特定理由離職者Ⅱ | 正当な理由のある 自己都合退職 |
離職日以前1年間に 被保険者期間が6ヶ月以上 |
なし (一部あり) |
後述①の表 (最長150日) |
| 一般受給資格者 | 正当な理由のない 自己都合退職 |
離職日以前2年間に 被保険者期間が12ヶ月以上 |
1ヶ月
~ 3ヶ月 |
後述①の表 (最長150日) |
特定受給資格者とは
次の理由により離職した受給資格者をいいます。
①倒産
破産、民事再生、会社更生などの各倒産手続の申立てまたは手形取引が停止等により離職した方。
②大量雇用変動
事業所において1ヶ月に30人以上の離職を予定する届出がされた、およびその事業主に雇用される被保険者の1/3を超える労働者が離職したために離職した方。
③事業所の廃止
事業活動の停止後、再開見込みがないことを理由に離職した方。
④事業所の移転
事業所の移転によって通勤が困難(往復所要時間がおおむね4時間以上)となったため離職した方。
⑤解雇
解雇(自分の責任によって生じた重大な理由による解雇を除く)により離職した方。
⑥労働条件の相違
労働契約の締結時に明示された労働条件と、実際の条件が著しく相違したことにより離職した方。
⑦給料の未払い
退職手当を除く賃金の1/3を超える額が支払期日までに支払われなかったことを理由に離職した方。
⑧給料の低下
以前支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(または低下することとなった)ため離職した方。
⑨長時間の時間外労働
離職直前の6ヶ月間における時間外労働が下記のいずれかに該当したため離職した方。
・いずれか連続する3ヶ月で45時間を超える
・いずれか1ヶ月で100時間を超える
・いずれか連続する2ヶ月以上の期間における時間外労働の平均が1ヶ月で80時間を超える
⑩危険や健康障害発生のおそれ
行政機関から危険や康障害発生のおそれがあることを指摘されたにもかかわらず、事業主が防止策を講じなかったため離職した方。
⑪妊娠や出産、介護中の強制労働
事業主が次の労働者を法令に違反して就業させたこと、雇用継続を図る制度の利用を不当に制限したこと、妊娠や出産もしくはそれらの制度の利用を申し出たことにより不利益な取り扱いを受けたため離職した方。
・妊娠中もしくは出産後
・子の養育もしくは家族の介護
⑫職種転換時の無配慮
職種転換などに際して、事業主がその労働者の職業生活の継続に対して必要な配慮をしていないため離職した方。
⑬労働契約の未更新
【勤続3年以上】
有期雇用契約の更新によって継続3年以上雇用され、労働者が更新を希望したにもかかわらず契約更新されなかった場合に離職した方。
【勤続3年未満】
労働契約時に契約の更新が明示されていたにもかかわらず、契約が更新されなかったことを理由に離職した方。(上記【勤続3年以上】の場合を除きます。)
⑭上司や同僚などからの嫌がらせ
上司や同僚などから故意の排斥、著しい冷遇、嫌がらせなどを受けたため離職した方。
事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントの事実を把握していながら、必要な改善措置を講じなかったため離職した方。
⑮事業主からの退職勧奨
人員整理等に伴い、事業主から直接的または間接的に退職の勧奨を受けたことにより離職した方。
従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに応募した場合は除きます。
⑯使用者の都合による3ヶ月以上の休業
事業所において使用者の責任により行われた休業が、引き続き3ヶ月以上となったことにより離職した方。労働基準法の規定により休業手当の支払いが3ヶ月以上連続していた場合が該当します。
⑰業務の法令違反
事業所が法令違反の製品を製造・販売するなど、業務が法令に違反したことにより離職した方。
特定理由離職者Ⅰとは
次の理由により離職した受給資格者をいいます。
労働契約の満了
有期雇用契約(労働契約において当該労働契約の更新または延長があることが明示されているが確約まではない場合)の期間が満了し、労働者が更新を希望したにもかかわらず、労働契約の更新がないことにより離職した方。
上記、特定受給資格者「⑬労働契約の未更新」に該当する方を除きます。
特定理由離職者Ⅱとは
次の「正当な理由」のいずれかに該当することより自己都合退職した方をいいます。
①心身の障害、疾病、負傷等
体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力・聴力・触覚の減退などにより従来の業務を続けることが困難となったため離職した方。
②妊娠や出産、育児等
妊娠、出産、育児などにより離職日の翌日から引き続き30日以上職業に就くことができないとして雇用保険法の受給期間延長措置を受けた方。
③家庭の事情の急変
父母の死亡、疾病、負傷等に伴う扶養や親族の疾病、負傷による看護など家庭の事情の急変により離職した方。
自家の火事、水害等により勤務を続けることが困難となったため離職した方。
④配偶者や親族との別居生活が困難
配偶者または扶養親族と別居を続けることが、家庭生活上においても経済的事情等においても困難になったため、同居することにより職場への通勤が不可能または困難な場所へ転居したため退職した方。
⑤通勤が不可能または困難
次の理由により通勤が不可能または困難となったため離職した方。
・結婚に伴う住所の変更
・育児に伴う保育所や施設の利用および親族への保育依頼
・事業所の通勤困難な場所への移転
・自己の意思に反する住所や居所の移転
・鉄道、軌道、バスなどの運輸機関の廃止または運行時間の変更
・事業主の指示による転勤または出向に伴う別居の回避
・配偶者の事業主による転勤もしくは出向の指示、または配偶者の再就職による別居の回避
⑥労働条件変更による相違
事業主が労働条件を変更したことにより、採用時の条件と実際の条件が著しく異なることとなったため離職した方。
⑦新技術への適用困難
新技術が導入されたことにより、自分の有する専門知識や技能を十分に発揮できなくなり、新技術への適応が困難になったため離職した方。
⑧希望退職者への応募
人員整理などによる希望退職者の募集に応じて離職した方。上記、特定受給資格者「⑮事業主からの退職勧奨」に該当する方を除きます。
受けられる優遇・メリット
被保険者期間の条件が緩和される
被保険者期間とは、被保険者期間として離職日からさかのぼって1ヶ月ごとに区切り、その区切られた1ヶ月の期間に賃金支払基礎日数が11日以上※あるとき、その1ヶ月の期間を被保険者期間として計算されます。
※計算された被保険者期間が要件に満たない場合は、賃金支払基礎日数が11日以上または賃金支払基礎時間数が80時間以上
一般受給資格者は、この被保険者期間が離職日以前2年間に12ヶ月以上ある場合に受給資格を満たしますが、特定受給資格者・特定理由離職者は、この受給資格が離職日以前1年間に6ヶ月以上に緩和されます。
給付制限がなくなる
通常、基本手当の受給には離職理由による給付制限(基本手当を支給しない期間)があります。正当な理由なく自己の都合により退職した場合は通常2ヶ月、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合や5年間のうちに2回以上正当な理由のない自己都合退職をした場合、3ヶ月の給付制限を受けます。
特定受給資格者・特定理由離職者※に該当すると、この給付制限はなくなり、7日の待期完了後失業の認定を受けることで給付が開始します。
※特定理由離職者Ⅱのうち、妊娠・出産・育児等を理由に離職し、離職日の翌日から受給期間延長措置を受けたことで正当な理由ありと認められた方で、受給期間延長措置を受けた期間が90日未満の方は、給付制限がかかります。
所定給付日数が増える
所定給付日数とは、基本手当が支給される日数のことであり、日数が多いほど最終的に受給できる基本手当の総額が増えます。
特定受給資格者と特定理由離職者Ⅰは、年齢と算定基礎期間に応じてこの給付日数が増えることがあります。
一般受給資格者は90日から150日であるのに対して、特定受給資格者・特定理由離職者Ⅰは90日から最長で330日まで受給することができます。
所定給付日数(①)
| 算定基礎期間 | 10年未満 | 10年以上 20年未満 |
20年以上 |
|---|---|---|---|
| 全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
所定給付日数(②)
| 算定基礎期間 | 10年未満 | 10年以上
20年未満 |
10年以上
20年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
| 30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
| 35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
| 45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
| 60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
国民健康保険料(税)や高額療養費負担限度額等が軽減される
特定受給資格者・特定理由離職者として基本手当を受給する方は、離職後国民健康保険に加入する場合、国民健康保険料(税)が軽減される制度があります。
具体的には、離職日の翌日の属する月からその月の属する年度の翌年度末まで※の国民健康保険料(税)は、前年の給与所得のみを100分の30に減額して計算されます。※対象期間内で他の保険に加入した場合は、国民健康保険の資格喪失日まで。
一般受給資格者には、この軽減制度はありません。
住民税が軽減される
特定受給資格者・特定理由離職者は、生活が著しく困難となり、個人住民税の納付が困難となった方を対象として、前年中の合計所得金額により減免を受けられる場合があります。
※市町村により異なりますので、要件等お住まいの市町村へご確認ください。
特定受給資格者と特定理由離職者の判断
特定受給資格者・特定理由離職者に該当するかどうかの判断は、離職理由によりハローワーク(公共職業安定所)が行います。事業主が主張する理由と離職者が主張する理由が異なることがありますが、それぞれの主張を確認できる資料をもとに事実確認を行ったうえで、最終的に訂正されます。
また、正当な理由のある自己都合退職と判断されるためには、退職前から準備が必要な事由もあります。例えば、ケガや病気のために退職した場合、退職時点での病状が医師の診断によって証明されなければならないので、退職後に病院へ行っても認められません。
