寡婦年金は、老齢基礎年金を受け取れるはずであった夫が亡くなった時に、要件を満たす妻に対して60歳から65歳までの間支給されます。
支給要件
この寡婦年金は夫が死亡したときのみで、妻が死亡した場合夫に支給されることはありません。
死亡した夫の要件
①国民年金の第1号被保険者としての受給期間を満たしていること
死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が10年以上であると受給期間を満たしているといえます。
②障害基礎年金の受給権者であったことがないこと
障害基礎年金を実際に支給を受けたことがなくても受給権者であったことがあると支給されません。
③老齢基礎年金の支給を受けていないこと
夫がなくなったとき、65歳になる前にもらえる繰上げ支給の老齢基礎年金を含み、老齢基礎年金の支給を受けていた場合は、寡婦年金は支給されません。
妻の要件
①夫が死亡した当時、夫によって生計を維持していたこと
②夫との婚姻関係が10年以上継続していたこと
婚姻関係は、事実上の婚姻関係(内縁の妻など)を含みます。
③65歳未満であること
夫の死亡の当時65歳以上の妻は、寡婦年金は受給できません。
④繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者でないこと
妻が繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者である場合は、要件に該当しません。つまり、65歳になる前にすでに自分の年金をもらっているときは、寡婦年金を受給することはできません。
その他の要件
・夫の死亡後5年以内に請求していること
年金給付を受ける権利は、その事由が生じた日から5年を経過すると、時効によって消滅してしまします。例えば、妻が50歳のときに夫が死亡した場合、60歳から受け取れるからといって60歳になったときに請求手続きをしても、受給権は消滅しているので受給することができなくなります。
寡婦年金の額
夫が本来もらうはずだった第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3が寡婦年金として妻に受給されます。
【計算式】
※保険料の免除期間があるなどの場合は計算が異なります。
※学生納付特例期間および納付猶予期間は、寡婦年金額に反映されません。
※夫が付加保険料を納付していた場合でも、寡婦年金に対して付加年金の加算はありません。
支給される期間
寡婦年金が受給されるのは、60歳から65歳までの5年間です。
夫が死亡した当時、60歳以上であった妻については、死亡日の属する月の翌月から支給されます。
また、死亡当時、妻が60歳未満であるときは、その妻が60歳に達した日の属する月の翌月から支給されます。
受給できなくなるとき
受給権がなくなる場合
次のいずれかに該当したときは、寡婦年金を受給できる権利が消滅します。
- 妻が65歳に達したとき
- 死亡したとき
- 婚姻したとき(事実婚も含みます)
- 養子となったとき(事実上の養子を含み、直系血族や直系姻族の養子は除きます)
- 繰上げ支給の老齢基礎年金を受給したとき
支給停止される場合
夫の死亡について労働基準法による遺族補償が行われるときは、死亡日から6年間その支給が停止されます。
死亡一時金が支給される場合
寡婦年金の受給権が発生する妻に対しては、同時に死亡一時金が支給されることがあります。この場合、寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることはできないので、どちらかを選択することになります。したがって、死亡一時金を受け取った場合には、寡婦年金は受給することができません。
遺族基礎年金・遺族厚生年金が支給される場合
遺族基礎年金(または遺族厚生年金)と寡婦年金の両方の受給権が発生する場合、妻が60歳未満であれば遺族基礎年金のみが支給されることになりますが、60歳に達しているときは、どちらか一方の年金を選択して受給することになります。したがって、遺族基礎年金の受給を選択した場合には、寡婦年金の支給は停止されます。