労働基準法上の労働者については、テレワーク(リモートワーク)を行う場合においても、労働者災害補償保険法が適用されますので、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務災害または通勤災害として労災保険給付の対象となります。
テレワークの場合、労働者のプライベートとの境界が曖昧になってしまいがちなので、ケガや病気が発生したときにその災害が業務との因果関係が明確であることを客観的に立証できるかが重要になってきます。
テレワークの形態別
テレワークの形態は、業務を行う場所に応じて、①労働者の自宅で行う在宅勤務、②労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用するサテライトオフィス勤務、③ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で行うモバイル勤務の3つに分類されます。
在宅勤務
業務中におけるパソコンなどの事務機器の使用に伴うケガは、基本的には業務上の災害と認められます。例えば、パソコンの操作で腱鞘炎を起こしたといったことなどが該当します。
その他に、業務に付随する行為として、在宅勤務での労働時間中に離席して自宅のトイレで用を足し、席に戻って椅子に座ろうとして転倒した事故が労災認定されたケースもあります。
一方、仕事の合間に家事や育児、介護を行ったことによりケガをするなどといった業務が原因ではない災害は、業務上の災害とは認められません。また、昼食を買いに行って事故に遭いケガをした場合も、業務との因果関係はないため認められません。
サテライトオフィス勤務
サテライトオフィスでの業務中の労災認定は、通常のオフィス勤務の労働者と同様です。
また、自宅とサテライトオフィスの往復中の災害は、合理的な経路と移動手段であれば、通勤災害として認められます。
モバイル勤務
営業先へ向かう途中など業務中であることが明らかである場合は、業務災害として認められると考えられます。ただし、勤務時間中に業務から離れて私用の買い物をする途中で災害が発生した場合などには、労災として認められません。
テレワークにおける労災認定の留意点
労働災害の発生に備え、業務との因果関係を明確にするためにも、以下のような対応を行い、労働者に対しても周知することが必要です。
労働時間の管理
業務の開始や終了だけでなく休憩を取るときは連絡を義務付けたり、情報通信機器の使用状況などの客観的な記録を取るなど、労働時間とそれ以外の時間を管理し、労働者から申告された時間の記録を適切に保存することが必要です。
就業場所の限定
テレワーク勤務者が気分転換を兼ねてカフェやファミレスなどで仕事をすることを認めている企業もありますが、自宅以外の場所で仕事をした場合、それが業務中であるのか私的行為であるのかが曖昧になります。労災保険の観点でいえば、原則的には就業場所を明確に定め、自宅に制限することが望ましいと考えられます。
状況の記録
労働者が負傷した場合の災害発生状況等について、事業主や医療機関等が正確に把握できるよう、ケガや病気が発生した状況等を可能な限り明確に記録しておくことが必要です。