労働者が遅刻をした場合、その遅刻時間分延長して労働したとき、遅刻分と残業分の労働時間を相殺することはできるのでしょうか?その場合、割増賃金を支払う必要はあるのでしょうか?
認められるケース
例えば、勤務時間が9時~18時(休憩1時間)の労働者が10時に始業し、1時間遅れて出社したため1時間繰り下げて19時までの勤務とすることは、労働基準法上認められています。
また、1日の実労働時間を通算すれば法定労働時間を超えないときは、割増賃金の支払の必要もありません。(昭和29.12.1基収6143号、平成11.3.31基発168号)
深夜に及ぶ場合
ただし、繰り下げたことによって、その労働時間が深夜(原則午後10時~午前5時)に及ぶ場合は、深夜業に対する割増賃金(25%以上の割増率)の支払が必要になります。
別日の労働時間との相殺
上記のように同日の遅刻時間と残業時間を相殺することは問題ありませんが、別日の残業時間と相殺することは労働基準法違反となります。
例えば、1時間遅刻した日の翌日に、1時間の早出出勤を含む残業をすることで、遅刻として扱わないとすることはできません。遅刻した日は1時間の欠勤扱いにし、翌日の法定労働時間を超える残業1時間分に対しては割増賃金を支払う必要があります。
遅刻時間と残業時間を相殺する場合には、労使間のトラブルを防止するためにも、その処理などの規定を就業規則に定めておきましょう。