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残業代の計算において「割増賃金」の基礎から除外される賃金・手当

残業代などの割増賃金は、基礎となる賃金に割増率を乗じて算定します。この割増賃金を算定するための基礎となる賃金からは、労働と直接的な関係が薄く個人的事情に基づいて支払われる賃金や計算技術上の困難があるものについては除くこととしています。具体的にどのような賃金・手当が除外賃金とされるのでしょうか?

 

割増賃金の基礎から除かれる手当

労働基準法施行規則21条において、次の賃金は、割増賃金の基礎となる賃金には算入しないと規定されています。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

1~5の手当については、労働と直接的な関係が薄く個人的事情に基づいて支払われる賃金であるため、これらをすべて割増賃金の基礎に算入すると公平性を欠くことになります。

6、7の手当については、計算技術上の困難があることから、割増賃金の基礎から除くこととしています。

 

また、これらの賃金・手当は例示ではなく限定列挙であるため、労働基準法に基づき、これら以外の賃金は割増賃金の基礎となる賃金に含めなければなりません。

ただし、上記の名目だからといって必ず除外しなければならないというわけではなく、これらが除外の対象となるか否かは、名称に関わらずその手当を支給する目的の実態によって判断されます。

 

家族手当

家族手当は、配偶者や子などを扶養している労働者に対して、扶養の人数に応じて支給される賃金をいいます。「配偶者手当」や「扶養手当」などの名称を使うこともあります。

ただし、家族の人数に関係なく一律に支給しているものは除外賃金に該当しませんので、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければなりません。

また、均衡上独身者にも一定額の手当が支払われている場合には、独身者に支払われている部分および扶養家族のある者に対して「本人分」として支払われている部分も同様に、除外賃金とされる家族手当ではないと考えられます。

 

通勤手当

通勤手当とは、労働者の自宅から職場までの通勤に要する費用につき支給される賃金をいいます。公共交通機関の交通費実費やマイカー通勤のガソリン代などがあります。

通勤に要した費用に応じて実費を支給するものが除外賃金とされますが、通勤距離に関係なく一律に支給するものや、一定額までは距離にかかわらず一律に支給するもののうちその一定額部分については、除外賃金とされる通勤手当に該当しないので、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければなりません。

 

別居手当

別居手当は、通勤の都合によって同一世帯の家族と別居を余儀なくされた労働者に対して生活費を補うために支給される賃金をいいます。「単身赴任手当」などの名称を使うこともあります。

家族との別居の理由が勤務の都合でなければ、除外賃金とされる別居手当には該当しません。

 

子女教育手当

子女教育手当は、子供の教育費を支援することを目的として支給する手当をいいます。「教育手当」や「子ども手当」などの名称を使うこともあります。

 

住宅手当

住宅手当とは、住宅に関する費用に応じて算定し、支給される賃金のことをいいます。「住宅補助金」などの名称を使うこともあります。

 

家賃や住宅ローンの支払金額など住宅に要する費用を基準として金額が決定されるものが除外賃金とされますが、住宅に要した費用にかかわらず労働者に対して一律に定額で支払われるようなものや、住宅の形態ごとに一律に定額で支払われるようなものは除外賃金には該当しませんので、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければなりません。

 

臨時に支払われた賃金

臨時に支払われた賃金とは、突発的事由に基づいて支給される賃金や支給事由の発生が不確定であるものに対して支給される賃金をいいます。例えば、祝金(結婚手当)や見舞金(傷病手当)などがこれに該当します。

 

1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金とは、賞与・ボーナスが該当しますが、このほかに臨時に支払われる賃金・賞与に準ずるものとして、労働基準施行規則8条において次のようなものが挙げられています。

 

  • 1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
  • 1ヶ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
  • 1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当

 

これらは割増賃金の基礎となる賃金に算入されませんが、これら以外の賃金・手当については、毎月1回以上払および一定期日払の原則により毎月支払わなくてはならないので、例えば月額で支給される皆勤手当などは除外賃金に該当しないため、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければなりません。