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交通費(領収書の出ない電車代・バス代・通勤手当・出張旅費等)のインボイスは必要?

取引先への訪問や通勤のために電車やバスなどの交通機関を利用した場合に、その交通費について仕入税額控除を行うためには、その都度インボイスの交付を受けることが必要なのでしょうか?

 

公共交通機関特例の対象

業務にかかる交通費について仕入税額控除を受けるためには、インボイス発行事業者である公共交通機関からインボイスを受領する必要があります。

ただし特例として、公共交通機関による旅客の運送のうち一部の取引については、インボイス発行事業者が行う事業の性質上インボイスを交付することが困難なため、インボイスの交付義務は免除されています。この場合、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで「仕入税額控除」が認められます。(新消法30⑦、新消令49①一イ、70の9②)

 

3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

インボイスの交付義務が免除される公共交通機関特例の対象となるのは、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送で、次のものをいいます。(新消令70の9②一)

  • バスによる旅客の運送(路線バス、観光バス、空港アクセスバス等)
  • 鉄道・軌道による旅客の運送(新幹線、鉄道、モノレール等)
  • 船舶による旅客の運送(フェリー、水上バス等)

 

特急料金・寝台料金

インボイスの交付義務免除の特例は、旅客の運送に直接的に附帯する対価も3万円以下であれば対象となります。

特急列車に乗車するために支払う特急料金・急行料金・寝台料金などは、旅客の運送に直接的に附帯する対価として公共交通機関特例の対象となるので、3万円以下であればインボイスの交付は免除されます。(インボイス通達3-10)

 

従業員に支給する通勤手当や出張旅費

従業員等に支給する「通常必要と認められる通勤手当」や「旅費規程等による出張旅費等(出張旅費・宿泊費・日当など)」については、消費税法上、課税仕入れに係る支払対価の額として取り扱われます。(基通11-2-2)※国内において行われるものに限ります。

この通勤手当や出張旅費等の課税仕入れの相手方は従業員となりますが、従業員本人はインボイス発行事業者ではないため、インボイスの交付を受けることができません。

そこで、インボイスの交付義務免除の特例として、従業員等に支給する通勤手当や出張旅費等のうち通常必要と認められる部分の金額については、インボイスの交付がなくても一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(新消法30⑦、新消令49①一ニ、新消規15の4三、インボイス通達4-10)。

この場合、通勤手当のうち所得税法上の非課税限度額を超えている場合であっても、旅費等が3万円以上の金額であっても、その全額が課税仕入れに該当し、仕入税額控除が認められます。

詳しくは下記のページをご参照ください。

従業員に支給する通勤手当・出張旅費・日当・交通費立替払の消費税の取扱いとインボイス
会社が従業員に通勤手当や出張旅費等(旅費・宿泊費・日当等)を支給する場合、課税仕入れの相手方は従業員となります。この場合、領収書(適格簡易請求書)やインボイスがなくても消費税の仕入税額控除を受けることができるのでしょうか? 消費税の取扱い ...

公共交通機関特例の対象とならないもの

3万円以上の交通費

そもそもインボイスの交付義務が免除される公共交通機関の旅客の運送の金額は3万円未満ですので、1回の取引が税込みで3万円以上のものは、インボイスの交付を受け保存する必要があります。(インボイス通達3-9)

 

入場料金・手回り品料金

入場料金や手回り品料金は、旅客の運送に直接的に附帯する対価ではないので、インボイスの交付がない場合には、仕入税額控除が認められません。(インボイス通達3-10)

 

飛行機の航空券

インボイスの交付が免除される「3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」は、船舶・バス・鉄道軌道に限られていますので、飛行機を利用した場合の航空券はインボイスの交付免除の対象となっていません。

 

タクシー料金

インボイスの交付が免除される「3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」には、タクシーの利用料金は含まれていません。

なお、大手のタクシー会社であれば、ほとんどがインボイス発行事業者になるためインボイスの交付義務がありますが、個人タクシーなどを利用する場合には、その個人タクシー事業者がインボイス事業者に該当するか否かで対応が異なります。

 

高速道路・有料道路料金

インボイスの交付が免除される「3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」には、高速道路の利用料金や有料道路の通行料金は含まれていません。仕入税額控除を行うためにはインボイスの保存義務がありますが、高速道路の利用時に発行される領収書は、現金、クレジットカード、ETCクレジットカード、ETCコーポレートカードによって、それぞれインボイス交付義務が異なっています。

 

公共交通機関特例の3万円未満の判定単位

3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します。(インボイス通達3-9)

したがって、切符を複数まとめて購入したときの切符1枚ずつの金額や、月毎でまとめた金額などで判定することにはなりません。例えば、新幹線の運賃が 15,000 円で、4人分の乗車券をまとめて購入した場合には、4人分 の60,000 円で判定することとなります。この場合は、3万円未満に該当しないため、帳簿とインボイスの両方の保存が「仕入税額控除」の要件となります。

 

一定の事項を記載した帳簿の保存とは?

インボイスの交付義務が免除される特例は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められますが、具体的に何を記載すれば良いのでしょうか?

例えば、3万円未満の電車の利用について対価を支払い、公共交通機関の特例を受ける場合は、通常必要な記載事項に加え「3万円未満の鉄道料金」などと記載することが必要です。(国税庁インボイス制度に関するQ&A問107)

なお、相手方(公共交通機関)の住所又は所在地の記載については、不要とされています。(インボイス通達4-7)