会社などの雇用主である給与の支払者は、その給与の支払いをする際に扶養親族などの数を考慮して「源泉徴収税額表」に基づいて概算で所得税を源泉徴収(天引き)しています。
ただし、この源泉徴収される税金は、毎月同じくらいの収入があるという前提で決められ、年の途中で昇給や扶養親族が増えるなどの変動があっても遡って修正することはしません。したがって、源泉徴収した所得税の1年間の合計額は、本来納付しなければならない所得税の適正年税額と一致しないのが通常です。
そこで、給与の支払者が、1年間の源泉徴収税額の合計額と正しい年税額を比較して、不一致を修正し、過不足税額を精算することになります。この手続きを「年末調整」といいます。
ところが、給与を受ける者が必ずしも年末調整を受けられるとは限りません。この年末調整ができる条件とできない条件は次のように区分されます。
年末調整の対象となる人
次のいずれかに該当する人(ただし、下記の⑤⑥⑧⑪のいずれかに該当する人は年末調整できません)
① 1年を通じて勤務している人
② 年の中途で就職し、年末まで勤務している人
③ 年の中途で退職した人のうち、
・死亡により退職した人
・著しい心身の障害のため退職した人で、本年中に再就職ができないと見込まれる人
・12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
・パートタイマーとして働くなど、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下で、退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受ける見込みがない人
④ 年の中途で海外の支店への転勤するなどの理由により、1年以上の予定で国内に住所または1年以上居所を有しない人
年末調整の対象とならない人
次のいずれかに該当する人は、年末調整ができません。
⑤ 本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
⑥ 災害により被害を受け、「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」の規定により、本年分の給与に対する源泉所得税等の徴収猶予又は還付を受けた人
⑦ 年の中途で退職した人で、上記の③に該当しない人
⑧ 2ヶ所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に「扶養控除等(異動)申告書」を提出している人(乙欄適用者)
⑨ 継続して同一の雇用主に雇用されない日雇労働者など(丙欄適用者)
⑩ 国内に住所または1年以上居所がない人(非居住者)
⑪ 年末調整を行うときまでに「扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人
年末調整の対象とならない人は、正しい年税額が納付されていませんので、確定申告によってその年の所得税を申告することになります。
また、年末調整の対象となる人でも確定申告でなければ控除できない規定があります。詳しくは、こちらをご覧ください。