年末調整還付税額が従業員から預かった源泉所得税額より多くなると、決算時に預り金の科目残高がマイナスになってしまうことがあります。
預り金の残高が、期中でマイナスの場合は問題ありませんが、期末(決算時)に貸借対照表上マイナスになっていることは、あまり好ましくないと考えます。
この問題を解決するための会計処理について仕訳例を紹介します。
預り金がマイナスになるケース
【給与支払時/年末調整還付時】給与とあわせて年末調整還付金を従業員に還付
年末調整還付金が給与から天引きした源泉所得税より少ない場合、
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | ×× | 現預金 | ×× |
預り金 (年末調整還付金) | 10,000 | 預り金 (源泉所得税) | 30,000 |
この場合は、預り金勘定の残高は20,000円(プラス)となるので問題ありません。
ところが、年末調整還付金額が通常の給与から天引きする源泉所得税額より多い場合は、
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | ×× | 現預金 | ×× |
預り金 (年末調整還付金) | 80,000 | 預り金 (源泉所得税) | 30,000 |
預り金勘定の残高は30,000-80,000=△50,000円となり、貸借対照表上マイナス表記となってしまいます。
そこで、マイナスになった預り金勘定については、「未収金(未収入金)」という勘定科目を使い処理します。
貸借対照表上、資産の勘定科目で翌期に戻ってくる意味合いの科目であればいいので、「立替金」「仮払金」とする会社もあります。
預り金をマイナスにしない会計処理方法
ここでは、2通りのやり方をご紹介します。
①最初から還付金を「未収金」として処理する方法
給与から天引きする源泉所得税を「預り金」、従業員に還付する年末調整還付税額を「未収金」として、使用する勘定科目を完全に分ける方法です。
給与支払時/年末調整還付時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | ×× | 現預金 | ×× |
未収金(未収入金) (年末調整還付金) | 80,000 | 預り金 (源泉所得税) | 30,000 |
未収金残高:80,000円 預り金残高:30,000円
年末調整還付税額をB/S上の資産である未収金に計上することで、預り金勘定がマイナスになることを防げます。
源泉所得税納付時(0円納付/申告時)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
預り金 | 30,000 | 未収金 | 30,000 |
未収金残高:50,000円 預り金残高:0円
年末調整控除未済額と貸借対照表上の未収金残高の金額は一致します。年末調整控除未済額がなくなったときに未収金残高も0円となり、その後の源泉所得税の納付時は [預り金××/現預金××] という通常通りの仕訳で処理します。
②決算時にマイナスとなった預り金残高を「未収金」に振り替える方法
マイナスとなった預り金を、決算のときだけ一旦未収金(資産)に計上させておく方法です。
給与支払時/年末調整還付時
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | ×× | 現預金 | ×× |
預り金 (年末調整還付金) | 80,000 | 預り金 (源泉所得税) | 30,000 |
預り金残高:△50,000円
決算時
マイナスとなっている預り金残高を、一旦「未収金」に振り替えておきます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
未収金 | 50,000 | 預り金 | 50,000 |
未収金残高:50,000円 預り金残高:0円
適用を記載する場合は、「年末調整控除未済額」としておくとわかりやすいでしょう。
翌期首
翌期首で一度未収金として計上した年末調整控除未済額を再び預り金勘定へ振り替えます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
預り金 | 50,000 | 未収金 | 50,000 |
未収金残高:0円 預り金残高:△50,000円
また預り金勘定はマイナスになりますが、源泉所得税の納付時には [預り金××/現預金××] という通常通りの仕訳で処理することができます。