役員や従業員の福利厚生のため健康診断や人間ドックを受診した場合、その費用を経費(損金または必要経費)にできるケースとできないケースがあります。
経費にするための3つの条件
①健康診断の実施者の対象が役員や特定の者だけでないこと
役員や特定の者のみ
親族や役員のみの法人、個人事業主で自分以外の従業員がいない場合などは、一般的に経費とすることが認められません。ただし、将来従業員を雇い入れた場合の就業規則を作成し、健康診断の規定に準じて実施している場合には、経費として妥当であると認められることもありますが、まれなケースのようです。
また、健康診断は従業員全員を対象にしているが、役員だけ特別に人間ドックを受けるなどとした場合の人間ドック費用も認められません。全員一律の受診内容であることが条件です。ただし、次のように社内規定で定めた場合は例外です。
年齢制限を設ける
社内規定により「40歳未満は定期健診・40歳以上は人間ドックを含む健康診断」などといった年齢によって限定することは可能です。
しかしその実態が従業員が若年層ばかりで特定の受診内容が役員のみとなるような規則を定めた場合は、損金として認められないこともありますので注意が必要です。
②社会通念上、必要であると認められる常識の範囲内の費用であること
一般的に実施されている健康診断や人間ドックの費用に比べ著しく高額なものは、その常識の範囲外を超えた金額については経費として認められません。
③健康診断や人間ドックにかかる費用を会社が直接医療機関等に支払っていること
例えば、従業員が受診時に現金で医療機関に支払い、その後会社が従業員にその立替金を支払うような場合は、会社が医療機関等に直接支払うことが要件となりますので経費として認められなくなります。
税務調査で経費として認められなかった場合
役員のみを対象とした人間ドック費用など、損金として認められなかった部分については、役員に対する賞与として扱われ、法人税上全額損金不算入となりさらにその賞与は源泉所得税の対象になります。また、役員個人における所得税および住民税の対象にもなります。
会社や個人にとっても税負担が増えてしまうことになりますので、健診費用を経費にするための条件をよく確認したうえで実施することが必要です。