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不動産貸付けの事業的規模の判断とメリット・デメリット

2019.08.25

不動産の貸付けによる所得は「不動産所得」になりますが、その不動産貸付けが事業として行われている場合には「事業所得」となり、所得税の取扱いが異なります。

  1. 事業的規模の判断
    1. 形式基準
  2. 事業的規模と事業的規模以外の相違点(メリット・デメリット)
    1. 青色申告特別控除
    2. 青色事業専従者給与・事業専従者控除
    3. 固定資産等に係る損失
    4. 貸倒損失
    5. 貸倒引当金
    6. 個人事業税

事業的規模の判断

原則として、不動産の貸付けが事業として行われているか(事業的規模であるか)どうかについては、貸付不動産の規模、賃貸料収入、管理等の状況などを総合的に勘案して、実質的に社会通念上事業といえる規模で行われているかどうかによって判断します。

その判定が難しい場合は、通達によって形式的に基準が設けられています。

形式基準

次の基準に当てはまれば、原則として事業的規模に該当すると判断します。

建物

建物の貸付けの場合、形式的に「5棟10室」基準が設けられています。それぞれの資産について次の規模であれば、「事業的規模」に該当します。

  • 貸間、アパート等・・・独立した室数がおおむね10室以上
  • 貸家・・・おおむね5棟以上
駐車場

駐車場の貸付けの場合、貸室と貸地の平均的賃料との比較や地域の実情等を考慮し、1室の貸付に相当する土地の貸付件数を「おおむね5」として判断するのが一般的です。

つまり駐車場の場合、5件を貸室1室に換算するため5件×10室=50件以上であれば、「事業的規模」に該当するといえます。

事業的規模と事業的規模以外の相違点(メリット・デメリット)

事業的規模に該当する場合、次の適用があります。

項目事業的規模事業的規模以外
青色申告特別控除65万円10万円
青色事業専従者給与
事業専従者控除
適用あり適用なし
固定資産等に係る損失全額必要経費所得金額限度
貸倒損失全額必要経費収入年の収入金額の減額
(更正の請求)
各種引当金適用あり適用なし
個人事業税課税される課税されない

所得税においては、所得控除や必要経費に算入できる項目が多く所得税額軽減のメリットがありますが、デメリットとしては個人事業税が課税されるという点です。

青色申告特別控除

一定の要件を満たす場合に最高65万円の青色申告特別控除が可能です。

事業的規模でない場合は、最高10万円の控除になります。

青色事業専従者給与・事業専従者控除

青色申告の事業専従者給与または白色申告の事業専従者控除の適用があり、専従者給与を必要経費に算入できます。

事業的規模でない場合は、適用はありません。

固定資産等に係る損失

建物の取壊し・除却などの資産にかかる損失は、全額を必要経費に算入できます。

事業的規模でない場合、必要経費と認められるのは、その年の資産損失を差し引く前の不動産所得の所得金額が限度となります。(赤字になりません)

貸倒損失

賃貸料等の回収不能による貸倒損失は、貸倒金の全額を貸し倒れた年の必要経費に算入します。

事業的規模でない場合は、収入に計上した年にさかのぼり、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、貸し倒れが生じた日から2か月以内に更正の請求(過去の申告の訂正)をします。

貸倒引当金

家賃滞納が生じている場合など、一定の金額を個別評価の貸倒引当金として必要経費にすることが認められます。

事業的規模でない場合は、貸倒引当金を算入することは認められません。

個人事業税

個人事業税における事業的規模の判断基準は所得税とは異なりますが、事業税において事業的規模に該当する場合は、個人事業税が課税されます。なお、不動産貸付業の税率は5%です。

事業的規模でない場合、事業税は課税されません。

個人事業税の課税対象となる不動産貸付業の認定基準についてはこちらのページをご覧ください。

個人事業税における事業的規模の判定基準
不動産・駐車場の貸付けにおいて、一定の基準を満たす場合は個人事業税の課税対象になります。 不動産貸付業・駐車場業として課税される認定基準は、貸付不動産の規模、賃貸料収入、管理等の状況などを総合的に勘案して行われます。 不動産貸付業の...
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目次

  1. 事業的規模の判断
    1. 形式基準
  2. 事業的規模と事業的規模以外の相違点(メリット・デメリット)
    1. 青色申告特別控除
    2. 青色事業専従者給与・事業専従者控除
    3. 固定資産等に係る損失
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