納税者が亡くなった場合、故人は自分で確定申告を行うことができませんので、相続人が、亡くなった納税者(被相続人)の所得税について確定申告を行います。
これを「準確定申告」といいます。
提出者
被相続人の準確定申告は、相続人が提出します。
相続人が複数人いる場合には、原則として相続人全員が共同で連署により提出します。
ただし、相続人間で争いがあるときなどは、各相続人が別々に準確定申告をすることもできます。この場合、他の相続人の氏名を付記し、他の相続人に申告した内容を通知しなければなりません。
提出期限と納付期限
準確定申告の提出期限は、相続開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から4ヶ月以内です。納付額がある場合の納付期限も、準確定申告の提出期限と同様です。
税金が還付される場合の申告に期限はありませんので4ヶ月過ぎても申告はできますが、還付請求権は5年までですので、還付金を受け取るには5年以内に行なう必要があります。
提出先
申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署となります。相続人(提出者)の住所地の管轄税務署ではありませんのでご注意ください。
税務署に直接提出するほか、郵送で提出することもできます。準確定申告書は相続税の申告を行う際に必要となりますので、郵送の際は切手貼付済の返信用封筒を同封し、控えを保管することをお勧めします。なお、準確定申告はe-Taxによる申告はできません。
準確定申告の手順・必要書類と注意点
準確定申告の手順や必要書類は通常の確定申告と同様ですが、相続人が行う確定申告には通常と異なる注意点もあります。
確定申告用紙
準確定申告の専用用紙はありません。通常確定申告を行う際に使用する「所得税の確定申告書」と使用します。
「確定申告書A」を使用する場合には、申告書の上余白に「準確」と記入し、「確定申告書B」を使用する場合には、標題の余白部に「準確定」と記入します。
「住所」欄は亡くなった人の住所地を記入し、「氏名」欄には亡くなった人の氏名の頭部に「被相続人」とつけ記入します。
※相続人が1人のためこの申告書付表の提出を省略する場合
「住所」欄は2段に分け、上段に亡くなった人の住所地、下段に被相続人の住所地を記入します。
「氏名」欄は2段に分け、上段に亡くなった人の氏名の頭部に「被相続人」とつけ、その上部に死亡年月日を記入します。下段には、相続人の氏名の頭部に「相続人」とつけ署名、押印します。
付表の添付
相続人が複数人いる場合は、各相続人の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入した付表の添付が必要です。相続人が1人の場合は、この付表を省略することができます。
個人番号(マイナンバー)
準確定申告書の提出にあたって、亡くなった人の個人番号は必要ありませんが、全ての相続人の個人番号の記入と本人確認書類の提示または写しの添付が必要となります。
相続人が1人のため申告書付表の提出を省略する場合、相続人の個人番号は申告書上部余白に記入します。
相続人が2人以上いる場合には、申告書付表の「個人番号」欄に各相続人の個人番号を記入します。
所得控除
医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などの各種所得控除については、その死亡日までに支出した金額等を基礎に控除額を計算します。
医療費についても、亡くなる前に被相続人が支払ったものが医療費控除の対象であり、亡くなった後に支払われた医療費は準確定申告の対象外です。ただし、亡くなった人の親族が医療費を負担している場合は、その親族の確定申告で医療費控除の対象とすることができます。
扶養控除
配偶者控除、扶養控除等は亡くなった人の死亡日の現況において判定します。ただし、年齢判定は死亡した年の12月31日で行ないます。
この場合の扶養控除の要件は、年間の合計所得金額の見積り額で判定することになります。その後、偶発的な事由により所得が発生したとしても、この判定に影響を与えません。
また、年の中途で死亡した被相続人の準確定申告において扶養親族がいた場合、年末において他の納税者の扶養親族として扶養控除の適用を受けることもできます。
2年分の確定申告
例えば、確定申告をしなければならない人が平成30年1月1日から平成30年3月15日(確定申告期限)までの間に確定申告書を提出しないで死亡した場合に、平成29年分と平成30年分の2年分の準確定申告が必要になります。
平成29年分については1月1日から12月31日まで、平成30年分については1月1日から死亡日までの所得について申告します。
この場合の準確定申告の期限は、平成29年分と平成30年分とも相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内です。
例えば、平成30年2月15日に亡くなった場合、29年分・30年分ともに申告期限は平成30年6月15日になります。