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退職金にかかる所得税・復興特別所得税・住民税の計算方法

2019.08.25

退職したときに会社から支払われる退職金には、通常、所得税および復興特別所得税・住民税が天引きされています。

退職金にかかる税金の計算方法について解説します。

 

  1. 退職金にかかる税金の計算方法
    1. ①退職金の額について
    2. ②退職所得控除額を求める
    3. ③課税退職所得金額を求める
    4. ④所得税を求める
    5. ⑤復興特別所得税額を求める
    6. ⑥所得税および復興特別所得税額
    7. ⑦住民税を求める
    8. ⑧税金の合計
  2. 退職所得にかかる税金の計算例
  3. 上記以外の税率および税金の種類について
    1. 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない方
    2. 死亡退職による退職金の場合
  4. 退職金にかかる税金の納付

退職金にかかる税金の計算方法

まず、源泉徴収前の退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額に1/2を乗じて課税退職所得金額を算出します。この金額に所得税率や住民税率をかけた金額が退職金にかかる税金になります。

計算方法の手順は以下のとおりです。

 

①退職金の額について

税金の計算で使用する退職金の額は、収入金額(源泉徴収前の金額)を使います。

退職金には、退職により会社から支払われる退職手当などの他、社会保険制度などにより支給される退職一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社等から受ける退職一時金なども含みます。

なお、確定給付企業年金規約に基づいて支給される退職一時金などで、退職金受取人が負担した保険料等がある場合には、その支給額から自己が負担した保険料等の金額を差し引いた残額を収入金額とします。

 

②退職所得控除額を求める

源泉徴収前の退職金の収入金額(①)から差し引く退職所得控除額を求めます。

勤続年数退職所得控除額
a20年以下の場合40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
b20年超の場合800万円+70万円×(勤続年数-20年)
c障害退職の場合AまたはBによる計算+100万円

注意点

  • 勤続年数は1年未満の端数は1年に切り上げます。
  • (aについて)上記の算式によって計算した金額が80万円未満の場合は、退職所得控除額は80万円になります。
  • (cについて)障害者となったことが原因で退職した場合は、AまたはBの算式によって計算した金額に100万円を加算します。
  • 前年以前に退職所得を受け取ったことがある場合や、同じ年に2ヶ所以上の会社から退職金を受け取ったときの退職所得控除額の計算は異なります。

 

③課税退職所得金額を求める

退職金の収入金額から②で求めた退職所得控除額を差し引いた額に1/2を掛けて課税退職所得金額を算出します。

課税退職所得金額=(①退職金の収入金額−②退職所得控除額)×1/2(千円未満端数切り捨て)

ただし、役員等としての勤続年数が5年以下(1年未満切り上げ)である人が、その役員等勤続年数に対応する退職金を受けとる場合は、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が課税退職所得金額となります。上の算式の1/2計算の適用はありません。

課税退職所得金額=(①退職金の収入金額−②退職所得控除額)(千円未満端数切り捨て)

 

④所得税を求める

③で求めた課税退職所得金額に以下の所得税の税率を掛けて、控除額を差し引いた残りの金額が所得税額となります。

これを基準所得税額といいます。なお、ここで算出した所得税額については、端数処理は行いません。

課税退職所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

 

⑤復興特別所得税額を求める

④で求めた基準所得税額に2.1%を乗じて計算した金額が復興特別所得税額となります。(平成49年12月31日まで)

復興特別所得税額=④基準所得税額×2.1%

 

⑥所得税および復興特別所得税額

源泉徴収する所得税および復興特別所得税は、百円未満の端数は切り捨てになります。

所得税および復興特別所得税額=④所得税+⑤復興特別所得税額(百円未満端数切り捨て)

 

⑦住民税を求める

退職金にかかる住民税は、退職した年の1月1日時点の住所地の区市町村で退職金を受け取った年に課税されます。

住民税の税率は一律10%(市町村民税または特別区民税6%・都道府県民税4%)ですので、以下の算式により計算します。

市町村民税または特別区民税=③課税退職所得金額×6%(百円未満切捨て)・・・A

都道府県民税=③課税退職所得金額×4%(百円未満切捨て)・・・B

個人住民税=A+B

 

⑧税金の合計

退職金から引かれる税金は、⑥所得税および復興特別所得税額と⑦住民税の合計額になります。

退職所得にかかる税金の計算例

【例】勤続年数30年2ヶ月、退職金22,545,400円の場合

①勤続年数:30年2ヶ月→31年(1年未満端数切り上げ)

②退職所得控除額:8,000,000+{700,000×(40年ー31年)}=14,300,000

③退職所得:(22,545,400ー14,300,000)×1/2=4,122,700(千円未満切捨)

④所得税および復興特別所得税:

・所得税:4,122,700×20%ー427,500=397,040
・復興特別所得税:397,040×2.1%=8,337
・合計:397,040+8,337=405,377→405,300(百円未満切捨)

⑤住民税:

・市町村民税または特別区民税:4,122,700×6%=247,362→247,300(百円未満切捨)
・都道府県民税:4,122,700×4%=164,908→164,900(百円未満切捨)
・合計:247,300+164,900=412,200

 

上記以外の税率および税金の種類について

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない方

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職金の額から一律20.42%の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

その場合、確定申告が必要となります。詳しくは以下のページをご覧ください。

退職金を受け取ったときの確定申告について(所得税・住民税)
会社を退職したときに退職金等をもらった場合、この退職金について確定申告をする必要はあるのでしょうか? 確定申告が不要なケース 退職所得は分離課税です。一般に退職金を受け取る時までに会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、それをも...
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死亡退職による退職金の場合

死亡退職によって、亡くなった後3年以内に支払が確定した退職金が相続人などに支払われた場合に、その退職金のうち相続税の課税の対象となるものについては、所得税および復興特別所得税の課税対象にはなりません。

 

退職金にかかる税金の納付

会社が退職金を支払った際は、所得税、復興特別所得税および住民税を源泉徴収または特別徴収し、支払った月の翌月の10日までに納税します。

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  1. 退職金にかかる税金の計算方法
    1. ①退職金の額について
    2. ②退職所得控除額を求める
    3. ③課税退職所得金額を求める
    4. ④所得税を求める
    5. ⑤復興特別所得税額を求める
    6. ⑥所得税および復興特別所得税額
    7. ⑦住民税を求める
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  2. 退職所得にかかる税金の計算例
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