生命保険契約の満期保険金や解約返戻金、死亡保険金を受け取ったとき、契約者(保険料負担者)と受取人が同一の場合、受け取った保険金は一時所得または雑所得となり、所得税が課税されますので、確定申告をする必要があります。
所得税が課税される場合
契約者 (保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | |
---|---|---|---|
満期保険金 | 夫 | 夫 | 夫 |
死亡保険金 | 夫 | 妻 | 夫 |
上記の表のように、契約者(保険料負担者)と保険金受取人とが同一人の場合、所得税が課税されます。
契約者(保険料負担者)と保険金受取人の関係性によっては相続税や贈与税が課せられますが、この場合の保険料を負担していたのは夫であり、夫が支払っていた保険金を夫が受け取っているため、相続税ではなく所得税になります。
確定申告を行う必要のない保険金
以下の保険金等については、差益について一律20.315%(所得税15.315%、地方税5%)の税率による源泉分離課税が適用されます。つまり、源泉徴収だけで課税関係が終了しますので、確定申告を行う必要はありません。
- 一時払養老保険や一時払損害保険などで保険期間等が5年以下のものまたは保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものの差益※
- 一時払個人年金保険(給付年金総額が定められている確定年金契約に限る。)で、契約開始から5年以内で年金支払開始前に解約されたものの差益※
※ 差益=満期保険金+配当金-一時払保険料
所得の種類
所得税が課せられる満期保険金等は、受取の方法により、所得の種類が異なります。
- 満期保険金等を一時金で受け取った場合は、一時所得になります。
- 満期保険金を年金で受領した場合には、公的年金等以外の雑所得になります。
課税の対象となる一時所得の計算方法
一時所得の金額は、その満期保険金等以外に他の一時所得がないとすれば、受け取った保険金の総額から既に払込済みの保険料又は掛金の額を差し引き、その額に一時所得の特別控除額(最高50万円)を控除した金額です。課税の対象になるのは、一時所得の金額に1/2を乗じた金額です。
課税一時所得の計算式
課税一時所得=(受取保険金額-払込保険料総額-一時所得の特別控除額<最高50万円>)×1/2
一時所得の特別控除額
一時所得の計算で、受取保険金額から払込保険料総額を控除した残額が50万円に満たない場合には、その金額が特別控除額となります。
複数の保険金を受け取った場合
同じ年に複数の保険金を受け取った場合、受け取る同じ種類の所得(満期や解約を一時金で受け取る一時所得同士、複数の年金を受け取る雑所得同士)は課税所得の計算上、これらは通算して課税されます。
計算例①
【例】一時所得となる満期保険金(契約A)、解約返戻金(契約B)を受け取った
契約A | 満期保険金500万円 | 払込保険料200万円 |
---|---|---|
契約B | 解約返戻金200万円 | 払込保険料100万円 |
契約A:満期保険金500万 - 払込保険料200万 = 300万
契約B:解約返戻金200万 - 払込保険料100万 = 100万
課税一時所得 =(契約A 300万 +契約B 100万 - 一時所得の特別控除額 50万円 )×1/2 = 175万円
計算例②
【例】一時所得となる満期保険金(契約A)、解約返戻金(契約B)を受け取った(契約Bにつき、差損が生じる場合)
契約A | 満期保険金500万円 | 払込保険料200万円 |
---|---|---|
契約B | 解約返戻金100万円 | 払込保険料150万円 |
契約A:満期保険金500万 - 払込保険料200万 = 300万
契約B:解約返戻金100万 - 払込保険料50万 = △50万
課税一時所得 =(契約A 300万 ー 契約B 50万 - 一時所得の特別控除額 50万円 )×1/2 = 100万円
計算例③
【例】一時所得となる満期保険金(契約A)、解約返戻金(契約B)を受け取った(一時所得が50万円に満たない場合)
契約A | 満期保険金300万円 | 払込保険料200万円 |
---|---|---|
契約B | 解約返戻金100万円 | 払込保険料180万円 |
契約A:満期保険金300万 - 払込保険料200万 = 100万
契約B:解約返戻金100万 - 払込保険料180万 = △80万
課税一時所得 =(契約A 100万 ー 契約B 80万 - 一時所得の特別控除額 20万円 ※)×1/2 = 0円
※特別控除額について、受取保険金額から払込保険料総額を控除した残額が50万円に満たない場合には、その金額が特別控除額となりますので、この事例では、
契約A 100万 ー 契約B 80万 = 20万 < 50万
すなわち、特別控除額は20万円となります。
配偶者控除や扶養控除を受けられなくなる
扶養になっている配偶者や親族が満期保険金等を受け取り、保険金等を受け取った場合の課税一時所得、年金を受け取った場合の課税雑所得とその他の所得との合計所得金額が所定の金額を超えた場合、配偶者控除・扶養控除を受けられなくなります。
一時所得は、住民税の課税対象になります
満期保険金等が所得税の課税対象になる場合は、個人住民税も課されます。