本来、自己都合退職による失業の場合、失業等給付(失業保険)を受け取るまでには、失業の手続き後通算7日間の待期からさらにおよそ2~3ヶ月後となりますが、自己都合で退職した方でもいくつかの条件に該当すると「特定理由離職者」となり、数か月を待たずに、手続きから7日後に支給が開始されます。さらに、国民健康保険料や住民税の減額などの様々なメリットを受けることができます。
今回は病気やケガ等により自己都合退職した方が、特定理由離職者に該当するための手続きと流れについて説明します。
「失業手当」「失業保険」「失業給付金」とは
一般に「失業手当」「失業保険」「失業給付金」と呼ばれるものは、雇用保険制度の失業等給付のうち一般被保険者に対する求職者給付の基本手当のことをいいます。このページでは、「失業等給付」とします。
失業等給付がもらえる条件
まず、失業等給付をもらうためには、雇用保険被保険者であることが前提です。
下記の方は、雇用保険の被保険者となりませんので、失業等給付を受けることはできません。
- 1週間の所定労働時間が20時間未満
- 継続して31日以上雇用されない者
- 季節的に雇用される者で、雇用期間が4ヶ月以内または1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 学校教育法に規定する学校の学生で、厚生労働省令で定める者
また、給付を受けるためには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 離職による被保険者資格喪失の確認を受けたこと(事業主によって資格喪失届・離職証明書を提出し離職票の交付を受けていること)
- 働く意思や能力があるにもかかわらず、就職できない状態(失業)にあること
- 離職の日以前2年間に被保険者期間は通算して12ヶ月以上あること(ただし今回の方法によりこの条件が緩和され、1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上で可能)
雇用保険の被保険者であるかどうかや被保険者期間を確認する方法は下記のページをご覧ください。
特定理由離職者とメリット
自己都合で退職した方でも条件を満たし「特定理由離職者Ⅱ」に該当すると、次のようなメリットがあります。
- 雇用期間が短くても受給できる
- 2~3ヶ月の給付制限がなくなる
- 所定給付日数が増える
- 国民健康保険料が軽減される
- 住民税が減免される(市町村による)
「特定理由離職者Ⅱ」とは、倒産・解雇などの理由以外で、正当な理由のある自己都合により離職した者をいいます。このページで紹介する「心身の傷病による退職者」であれば、正当な理由があるといえます。
【心身の傷病による退職者】
①又は②のいずれかに該当したため離職した場合が当てはまります。
① 身体的条件のため、就いている業務(勤務場所への通勤を含む)を続けることが不可能又は困難となった場合
② 身体的条件のため、事業主から新たに就くべきことを命ぜられた業務(当該勤務場所への通勤を含む)を遂行することが不可能又は困難である場合
※ただし、①に該当しても②に該当しない場合は、この基準に該当しません。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
特定理由離職者として受給する方法
いよいよ本題に入りますが、特定理由離職者として失業等給付を受ける手続きと流れについて説明します。
給付までの主な流れは次のとおりです。
- 退職日より前に医師による診断を受ける
- 退職時また退職後、会社から離職票を受け取る
- 退職後、離職票を受け取ったらハローワークで手続き(病状証明書の用紙をもらう)
- 病院にて病状証明書の記入をしてもらう
- 雇用保険説明会に出席する(病状証明書を提出)
- 認定日にハローワークへ
- 失業等給付の入金
以下、具体的な手順を解説していきます。
退職日より前:医師による診断を受ける
退職する前に病気やケガによる症状があり、病院を受診していなければなりません。症状があるのに受診していなかった場合は特定理由離職者に該当する証明ができません。
この医師による診断は、診療科は問わず、整形外科や精神内科等でも可能です。必ずしも仕事が原因で発症した病気である必要はなく、「肩こり」「なんとなくだるい」といったような症状でも特定理由離職者に該当した実例があります。この診断は病院や医師の判断によります。
この段階で、必要な書類はありません。
退職:会社から離職票を受け取る
退職時または退職後に事業主から「雇用保険被保険者離職票-1・2」が交付されます。この離職票は、失業等給付の手続きをする際に提出するため必要なものになります。
自己都合退職の場合、雇用保険被保険者離職票-2の右ページに記されている離職区分が「4D」(正当な理由のない自己都合退職)となっているかと思いますが、後にハローワークでこの区分が訂正されることになります。
退職後:ハローワークで手続き&病状証明書の用紙をもらう
離職後は、ご本人がハローワークで手続き(求職の申込み)を行い、提出した書類等により受給資格の確認と決定が行われます。その際、担当者に特定理由離職者に該当することを伝え、「病状証明書」の用紙をもらいます。病状証明書は「疾病証明書」「就労可能証明書」「主治医の意見書」などといった名称もあります。
病状証明書は離職前にあらかじめもらうこともできますが、ハローワークによっては離職票がないと用紙をもらえない場合もありますので、ご自身の管轄のハローワークでお尋ねください。
通院時:病院にて病状証明書の記入
退職前に受診した病院にて「病状証明書」の用紙に必要な事項を記入をしてもらいます。(受診と証明書の交付のために、診察代+文書料千円~数千円がかかります)病状証明書の記入は必ず、退職日より後でなければなりません。
【注意点】この「病状証明書」には次のことが記載されている必要があります。
- 退職時点で、就業することが困難であること
- 退職後、働ける状態にあること
失業等給付は、働くまでの間生活の安定を図る目的で支給されるものですので、退職後、病気やケガのため働けない状態である方は、そもそも給付の対象ではありません。
これらの文言がなく、不備があると何度もハローワークと病院に行くことになりますので、見本のとおり記入してもらいましょう。また、病状によっては医師の判断により証明をすることが困難な場合もあります。
雇用保険説明会に出席する(病状証明書を提出)
雇用保険説明会に出席すると受給資格者証が交付されます。その際に病状証明書を提出し、特定理由離職者に該当することが認められると、交付された受給資格者証に記載されている退職理由のコード番号が40(正当な理由のない自己都合退職)から33(正当な理由のある自己都合退職)に変更され、特定理由離職者として給付制限が免除されることになります。
↓ 離職理由変更後
認定日にハローワークへ
受給手続きを開始した日から通算7日間経過すると待期期間が完了し、給付制限の2~3ヶ月を待たずに、支給が開始されることになります。あとは通常の失業等給付と同じように認定日にハローワークで失業の認定を行うことで、認定を受けた日数分の失業等給付が入金されます。(振込みまで1週間程度)
最初の給付までの具体的な日数
例えば、離職日が3月31日だとします。1週間後の4月7日に受給のための手続きを行う(求職申込日)とすると、待期満了日は通算7日経過する4月13日となります。最初の認定日は、求職申込日から4週後の5月5日であり、待期満了日の翌日から認定日の前日まで(4月14日~5月4日)の21日分の失業等給付が5月5日以降に振り込まれます。
つまり、最初の振り込みは離職日に関係なく、原則として受給手続きから起算して4週(28日)以降になりますので、早い受給を希望する場合は早めに手続きをすることをお勧めします。
ハローワークに申請した離職理由が会社にバレる?
病気であることを隠して別の理由で退職したとしても、ハローワークが会社に本当の退職理由を伝えることはありません。会社に申請した退職理由と必ずしも一致していなければいけないということはありません。