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個人が業務用の自動車を売却したときは事業所得?譲渡所得?仕訳と消費税の取扱い

法人が事業用車両を売却した時の損益は、「固定資産売却損」または「固定資産売却益」として法人の所得額に反映しますが、個人が車両を売却したときは、その車両を事業の用に使用していてもその損益は事業所得や不動産所得に含めません。つまり、売却損や売却益は支出や収入にならないということです。

では、どのような所得の区分になるのでしょうか?また、売却時の仕訳や消費税の取扱いについても説明します。

業務用の車両

個人事業主が事業の用に供している車両を売却したときの譲渡損益は、事業所得ではなく譲渡所得になります。その損益は、確定申告において他の総合課税所得(事業所得・不動産所得など)と合算して課税されます。

譲渡損益は次のように計算します。

譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)= 譲渡損益

この譲渡損益額がマイナスになる場合は、その損失額を他の総合課税所得から差し引くことができます。

通常、自動車の売却で利益が出ることは稀だと思いますが、譲渡損益がプラスになる場合には、所有期間によって次の譲渡所得が課税されます。

所有期間が5年以内(総合短期譲渡所得)

譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)= 譲渡益
譲渡益 - 特別控除額(最高50万円)= 譲渡所得 … 課税対象
特別控除額は、まず先に短期譲渡所得の譲渡益から控除し、残りがあれば長期譲渡所得の譲渡益から控除します。短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計で最高50万円が限度です。譲渡益が50万円より少ない場合は、譲渡所得金額は0になります。(以下同じ)

所有期間が5年超(総合長期譲渡所得)

譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)= 譲渡益
譲渡益 - 特別控除額(最高50万円)= 譲渡所得
譲渡所得 × 1/2 … 課税対象

所有期間が5年を超える長期譲渡の場合、譲渡所得の2分の1が総合課税の対象になります。

事業所得など他の総合所得に赤字が生じたときは、特別控除額を差し引いた後の譲渡所得(長期譲渡所得の2分の1を乗じる前の金額)と損益通算します。

非業務用の車両

非業務用の自動車、すなわち自家用車の場合には、売却した車両が「生活に通常必要な資産」か「生活に通常必要でない資産」のどちらに該当するかで所得税の取扱いが異なります。

生活に通常必要な資産の場合

個人の日常の通勤や買い物など生活の用に供する自動車を売却した場合は、所得税法上非課税とされていますので、譲渡利益が出ても所得税は課税されず、もちろん譲渡損失が出ても他の所得との損益通算はできません。

生活に通常必要でない資産の場合

キャンピングカーなどのレジャー目的のみで保有している車両を売却した場合、譲渡利益が生じたときは業務用車両の場合と同様に譲渡所得として課税され、他の総合所得(事業所得、給与所得など)と損益通算をします。

ただし、譲渡損失が生じた場合には他の所得と損益通算ができず、他の一定の資産にかかる譲渡所得との通算のみとなります。

 

事業共用の自家用車

自家用車を業務と兼用している場合は、事業割合で按分して譲渡利益または譲渡損失を計算します。また、消費税についても按分計算をします。

 

仕訳と消費税の取扱い

【仕訳例】
業務用自動車(期首帳簿価額500,000円、減価償却累計額90,000円)を300,000円で売却した。
なお、売却月までの減価償却費およびリサイクル料金等は考慮しないものとする。消費税等は10%とする。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
 現金預金300,000
(売却代金)
車両運搬具272,728
(課税売上)
減価償却累計額90,000仮受消費税等27,272
 事業主貸137,272
(売却損)
車両運搬具227,272
(課税対象外)

個人事業主が業務用車両を売却した場合、売却損や売却益は事業所得の支出や収入に含めないため「事業主貸」や「事業主借」で処理します

消費税の取扱い

所得税法上、車両の売却損益は事業所得や不動産所得に反映しませんが、消費税法上は業務用車両の売却額は課税売上に該当します。したがって、納税義務を判定する「基準期間における課税売上高」に含め、消費税の課税事業者の場合には、消費税の計算において、売却に伴い生じた課税売上の額を忘れずに計上しましょう。

ただし、個人事業主であっても業務以外で使用する自家用車を売却した場合は、事業として行われる資産の譲渡に該当しないため、消費税は課税対象外となります。