所得税は、個人が得た所得を10種類に区分して、その所得の態様や性質を考慮しそれぞれに見合った税金の計算をすることとしています。
10種類に区分した所得のうち、譲渡所得について説明します。
譲渡所得とは
譲渡所得とは、土地や建物などの資産の譲渡による所得をいいます。
なお、譲渡とは、売買、交換、物納、競売、収用、代物弁済、現物出資、財産分与、贈与など、資産の移転が行われる行為のことをいいます。
非課税とされるもの
次の譲渡は、非課税とされ所得税が課税されません。
- 生活に通常必要な動産の譲渡(家具や衣服など)
- 1個(1組)の価額(時価)が30万円以下の宝石、書画、骨とう、美術工芸品など
- 公社債等の譲渡
- 国等に対する財産の寄付
- 強制換価手続により資産が競売されたことによる所得
譲渡所得とならないもの
次の譲渡は、譲渡所得以外の譲渡になります。
- 棚卸資産の譲渡・・・事業所得
- 山林の譲渡・・・事業所得、山林所得、雑所得
- 準棚卸資産の譲渡
事業所得に係るもの・・・事業所得
事業所得以外に係るもの・・・雑所得
譲渡所得の5区分
譲渡所得は、資産の種類や所有期間によって課税方法が異なるため、次のように分類されます。
総合短期譲渡所得 | 土地・建物以外の資産の売却(所有期間が5年以下) |
総合長期譲渡所得 | 土地・建物以外の資産の売却(所有期間が5年超) |
分離短期譲渡所得 | 土地・建物の売却(売却年の1/1の所有期間が5年以下) |
分離長期譲渡所得 | 土地・建物の売却(売却年の1/1の所有期間が5年超) |
株式等に係る譲渡所得 | 株式等の売却 |
・自己の研究成果である特許権、自己の著作に係る著作権等の譲渡は、所有期間に関係なく常に総合長期となります。
・借家権の譲渡は、総合課税となります。
所得金額の計算
土地・建物以外の譲渡所得(総合短期・総合長期)
総収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)= 譲渡益
譲渡益 - 特別控除額(最高50万円)※= 譲渡所得
※特別控除額は、まず先に短期譲渡所得の譲渡益から控除し、残りがあれば長期譲渡所得の譲渡益から控除します。短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計で最高50万円が限度です。譲渡益が50万円より少ない場合は、譲渡所得は0になります。
土地・建物等の譲渡所得(分離短期・分離長期)
総収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)= 譲渡益
譲渡益 - 特別控除額※= 譲渡所得
※特別控除額は、一定の要件を満たす場合にそれぞれの金額が適用されます。
収用等により土地建物を譲渡した場合 | 5,000万円 |
マイホームを譲渡した場合 | 3,000万円 |
特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 | 1,500万円 |
平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合 | 1,000万円 |
農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 | 800万円 |
株式等に係る譲渡所得
総収入金額 - (取得費 + 譲渡費用 + 負債の利子)= 譲渡損益
※株式等に係る譲渡損が生じても株式等以外の譲渡益とは通算できません。
譲渡所得の課税方法
譲渡所得が生じた場合、確定申告が必要になります。譲渡所得の課税方法は、区分ごとに異なります。
総合短期譲渡所得 | 土地・建物以外の資産の売却(所有期間が5年以下) | 総合課税 |
総合長期譲渡所得 | 土地・建物以外の資産の売却(所有期間が5年超) | 1/2を総合課税 |
分離短期譲渡所得 | 土地・建物の売却(売却年の1/1の所有期間が5年以下) | 分離課税 |
分離長期譲渡所得 | 土地・建物の売却(売却年の1/1の所有期間が5年超) | 分離課税 |
株式等に係る譲渡所得 | 株式等の売却 | 分離課税 |
総合課税は、譲渡所得の金額を他の所得の金額と合計し、累進税率によって所得税額を計算する方法をいいます。
分離課税は、他の所得の金額とは区別し、別個に規定された税率によって所得税額を計算する方法をいいます。