所得税は、個人が得た所得を10種類に区分して、その所得の態様や性質を考慮しそれぞれに見合った税金の計算をすることとしています。
10種類に区分した所得のうち、給与所得について説明します。
給与所得とは
給与所得には、役員や従業員に支払われる給料や賞与のほか、残業手当や住宅手当、通勤手当(非課税分を除く)、金銭以外で支給する物や権利の現物支給や経済的利益なども該当します。
【給与所得になるもの】
金銭 | 給料、賃金、俸給、歳費、賞与など |
手当 | 残業手当、家族手当、住宅手当、一定金額を超える通勤手当 通常必要と認められない出張手当、一定金額を超える宿直・日直手当 |
現物給与 | 食事の現物支給、商品の譲渡や値引販売 経済的利益(土地や家屋を無償・低い対価で貸し付ける、借金の免除や負担など) |
俸給とは公務員が受ける給与、歳費とは国会議員が受ける給与をいいます。
給与所得とならないもの
そもそも「給与」とは、雇用契約に基づき労務の対価として勤務先から支払を受ける給付をいいます。
なお、「雇用契約」とは、労働者が使用者に対して労働に従事することを約し、また報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる契約をいいます。したがって、委任契約や請負契約は給与に当たりません。
さらに、勤務先から受けるものとして退職金がありますが、退職金にかかる所得は給与所得には該当せず、退職所得になります。
所得金額の計算
給与所得の金額は、1暦年間の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除して求めます。
所得金額=収入金額※(源泉所得税控除前)- 給与所得控除額
収入金額
給与は、支払いを受けるときに所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれていますので、手取り額から差し引かれた源泉徴収税額等を加算します。
収入金額 = 手取り金額 + 源泉徴収税額(源泉所得税、住民税、社会保険料など)
ダブルワークや副業で複数の勤務先からの所得がある場合には、収入金額は合計額になります。
給与所得控除額
給与所得を算出するにあたって給与等の収入金額から控除できる給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて、次のようになります。
収入金額 | 給与所得控除額 |
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 最低控除額650,000円 |
1,800,000円超3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
給与所得の課税方法
給与所得は、支払いを受ける際に所得税が源泉徴収(天引き)されますが、給与所得は他の所得と総合して税額を計算する総合課税となりますので、本来確定申告が必要となります。
しかし、年末まで勤務先に在職しているときは、勤務先が「年末調整」を行い、その年に支払った給与について適正税額を計算し、天引きされた源泉徴収税額との差額を精算します。これよって正しい所得税額を納めたことになりますので、確定申告は必要ありません。
ただし、次のような場合は、確定申告をする必要があります。
- 給与以外に20万円を超える所得がある
- 給与収入が2,000万円を超える
- 2つ以上の会社から給与の支払いを受けている
- 給与の源泉徴収につき災害減免法の適用を受けている など