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役員や従業員等に対する貸付金の利息の計算方法と会計処理(勘定科目・仕訳・消費税の取扱い)

社長が、役員報酬を低く設定しているために、個人の生活資金が足りず会社からお金を借りることがあります。

直接金銭を借りた認識でなくても、株主が社長やその家族だけといった会社は、会社のお金を私用に使っているケースも少なくありません。また、税務調査で売上の計上漏れが指摘された場合、それを社長に対する貸付金とされる場合もあります。

このように役員や従業員に金銭の貸付を行った場合には、会社は営利を目的とするので、利息を徴収しなければなりません。

逆に役員が会社に金銭を貸し付けた場合は、個人は営利を目的としていないので、利息を徴収する必要はありません。

 

利息を取らないとどうなる?

役員や従業員から利息を取らなかった場合、給与として課税されることになります。

また、低い利息で金銭を貸し付けた場合には、上記の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が、給与として課税されることになります。

例えば・・・

会社が社長から徴収すべき利息を受け取っていない

会社は利息を受け取ったことにし、その利息分を役員給与として支払ったとみなす

・会社に課税される税金=受取利息(益金)に対する法人税
・社長に課税される税金=役員給与(所得)に対する所得税
これらを納付していないことになります。

また、役員給与とみなされた部分は、定期同額給与など一定の要件を満たさないと法人税の計算上、損金に算入できません。

 

貸付金利息の適正な利率

金銭を貸し付けたとき

まず、具体的に貸付金の利息は、いくらにすればよいのでしょうか?

徴収すべき適正な利息は、次の利率によって計算します。

① 会社が銀行などから借り入れて貸し付けた場合・・・その借入金の利率
② 融資を受けていない場合・・・特例基準割合による利率

 

特例基準割合とは

特例基準割合とは、「前々年の10月から前年の9月までの各月の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合」に、年1%の割合を加算した割合をいいます。

「前々年の10月から前年の9月までの各月の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合」は、前年の12月15日までに財務大臣が告示します。

【平成26年1月1日以後の特例基準割合】
財務大臣が告示する国内銀行の新規の短期貸出約定平均金利の当該年の前々年10月から前年9月までにおける平均+1%

なお、平成25年12月31日までの特例基準割合は、次のとおりです。

「前年の11月30日を経過する時における商業手形の基準割引率+年4%」

 

具体的に、各年の特例基準割合は次のとおりとなります。

平成11年以前7.3%
平成12年~13年4.5%
平成14年~18年4.1%
平成19年4.4%
平成20年4.7%
平成21年4.5%
平成22年~25年4.3%
平成26年1.9%
平成27年~28年1.8%
平成29年1.7%
平成30年~令和2年1.6%
令和3年1.5%
令和4年~令和5年1.4%

なお、使用人に対する住宅資金の貸付けを平成22年12月31日までに行った場合には、年1%の利率を基準とする特例があります。

 

会社の資産を貸し付けた場合

会社の金銭ではなく、資産を貸し付けた場合は特例基準割合による利率により計算します。

 

貸付金残高の計算方法

貸付金利息は、いくつか計算方法がありますが、このページでは「貸付金残高に年利率を乗じる」ことで算出します。

そこで、この計算の基となる「貸付金残高」は、合理的な方法で算出しなければなりません。
計算方法は、主に次の3パターンで処理することが考えられます。

 

①一般的な方法

計算の基となる貸付金残高の金額=(期首残高+期末残高)÷2

貸付金の期首残高と期末残高を足して2で割る方法です。よく見られる計算方法かと思います。

②簡便的な方法

計算の基となる貸付金残高の金額=期末残高

貸付金の期末残高をそのまま計算に使う方法です。もっともわかりやすく簡単ですが、期中で大きな増減がある場合には合理性に欠けます。

③合理的な方法

計算の基となる貸付金残高の金額=(期首残高+毎月末残高の合計)÷13

貸付金の期首残高と毎月末(12ヶ月分)の貸付金残高を合計して、13で割る方法です。毎月の残高を一番正しい数字に近づき、合理的な方法といえます。

 

計算例と仕訳例

①の一般的な方法で計算してみましょう。

【例】
貸付金期首残高:500,000円
貸付金期末残高:200,000円
利率:1.5%

【計算例】
①計算の基となる貸付金残高 (500,000+200,000)÷2=450,000
②利息の金額 450,000×1.5%=5,250

【仕訳例】

借方金額貸方金額
現金など※5,250受取利息5,250

※金銭を回収していない場合は「未収入金」などの勘定科目を使用します。

受取利息の消費税の取り扱いは、「非課税売上」です。

 

利息を取らなくてもよい場合

  • 災害や病気などで多額の生活資金が必要となったとき
  • 徴収すべき利息が年間で5,000円以下であるとき

このような場合は、利息を取らなくても給与として課税されません。

 

貸付金のデメリット

役員に対する貸付金が資産に計上されていると、銀行など金融機関の印象が悪く、融資を受けようとするとき不利になります。貸付金は、会社の事業資金を役員が私的利用しているとみなされてしまうわけです。

本来、貸付金は金銭債権なので資産に計上されていますが、長期的に貸し付けている場合など返済見込みがないと判断され、融資の審査の際、資産として評価されません。

また受取利息を計上する必要があるため、法人税の額が増加する可能性があります。

デメリットの方が多い貸付金は、会社や個人の事情を考慮した上で、早期返済など対策をとることが重要です。また、貸付金が発生しないよう、会社のお金は個人のお金と明確に分けて管理することも必要になります。