特定口座(源泉徴収あり)で確定申告不要の場合
特定口座内で生じた所得に対して、所得税や住民税を源泉徴収して納税申告手続きを完了させる源泉徴収口座を選択した場合は、原則として確定申告が不要です。
特定口座(源泉徴収あり)内で生じた上場株式等の譲渡利益や配当金は、確定申告をしなければ健康保険料の算定や医療費の自己負担割合(窓口)の判定の対象となる所得金額には含まれないので、健康保険料や70歳以上の医療費自己負担割合が増えることはありません。
ただし、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例の適用を受けるために確定申告をする場合には、その適用後の所得については、国民健康保険制度および後期高齢者医療保険制度において健康保険料の算定や医療費の自己負担割合の判定の対象になります。
確定申告をする場合
社会保険(協会けんぽや健康保険組合等)の加入者
健康保険料・厚生年金保険
会社員などの給与所得者で協会けんぽや会社の健康保険組合に加入している方の健康保険料および厚生年金保険料は、毎月の給与・賞与の額に基づいて算定されています。上場株式等に係る譲渡所得や配当所得は、そもそも社会保険料の算定や医療費の自己負担割合の判定に含まれないので、確定申告をしても給与から天引きされる社会保険料には影響しません。
医療費の自己負担額
70歳以上75歳未満の一般所得者の医療費窓口自己負担は2割ですが、一定以上の所得者は3割負担となります。上場株式等に係る譲渡所得や配当所得を申告しても、その所得は保険料と同様に医療費の自己負担割合の判定に含まれないので、原則として被保険者本人の負担割合には影響しません。
国民健康保険の加入者
国民健康保険料(税)
国民健康保険料(税)は、前年1年間の総所得金額・世帯の加入者数・年齢をもとに市区町村ごとに定められます。
株式等に係る譲渡所得や配当所得は、保険料の算定のもととなる所得金額に含まれますので、上場株式等の譲渡益や配当金を申告することにより所得が増え、翌年の国民健康保険料が増額します。
なお、国民健康保険には扶養の概念はなく、世帯の人数や世帯全員の所得等で世帯ごとの保険料が決まるため、同世帯内で譲渡益や配当金について確定申告をする方がいると世帯の保険料が増額します。
医療費の自己負担額
国民健康保険の被保険者のうち6歳以上70歳未満の方は、所得金額にかかわらず医療費の自己負担割合は3割です。
70歳以上75歳未満の方の医療費自己負担は、2割または1割負担ですが、上場株式等に係る譲渡所得や配当所得を申告することにより所得や収入が一定金額を超えた場合は、医療費自己負担の割合が3割になる可能性があります。
後期高齢者医療の加入者
健康保険料
後期高齢者医療保険料は、前年1年間の総所得金額・世帯の人数をもとに都道府県ごとに条例によって定められます。
株式等に係る譲渡所得や配当所得は、保険料の算定のもととなる所得金額に含まれますので、上場株式等の譲渡益や配当金を申告することにより所得が増え、翌年の後期高齢者医療保険料が増額します。
なお、後期高齢者医療保険には扶養の概念はなく、世帯の人数や世帯全員の所得等で世帯ごとの保険料が決まるため、同世帯内で譲渡益や配当金について確定申告をする方がいると世帯の保険料が増額します。
医療費の自己負担額
年齢が75歳以上(一定の障害がある方は65歳以上)のすべての方は後期高齢者医療の加入者となり、医療費の自己負担割合は、原則1割です。上場株式等に係る譲渡所得や配当所得を申告することにより所得や収入が一定金額を超えた場合は、医療費自己負担の割合が2割または3割になる可能性があります。
70歳以上の医療費3割負担の減額について
70歳以上の国民健康保険の被保険者または75歳以上の後期高齢者医療の被保険者のうち、課税所得が145万円以上の方は3割負担となりますが、一定の収入金額未満であれば、申請により2割負担になることがあります。その判定は、申告された上場株式等の譲渡や配当金の収入金額を含むすべての収入金額をもとに行われます。この際、損益通算後に所得がマイナスであっても、通算前の収入金額が判定に使用されます。
住民税の申告不要制度を選択すれば保険料・自己負担割合に影響しない
上記のように、確定申告をした結果、税金の還付分や減額分よりも保険料や医療費自己負担の増額分が上回る場合があることを留意しなければなりませんが、所得税の確定申告をしても保険料・自己負担割合に影響させない方法があります。
上場株式等に係る譲渡所得および配当所得については、所得税の確定申告とは別に住民税の申告をすることにより所得税と異なる課税方式(申告不要制度・申告分離課税)を選択することができます。
住民税の税額決定納税通知書が発送される日までに、住民税の申告において申告不要制度を選択することにより、保険料の算定及び70歳以上の医療費の自己負担割合の判定対象には含まれません。