通勤手当とは、労働者の自宅から勤務先までの通勤にかかる費用を会社が補助する目的として支給される手当をいいます。公共交通機関を利用した場合の実際にかかった交通費やマイカー通勤の通勤距離に応じたガソリン代などがこれに該当しますが、会社が支払う義務はあるのでしょうか?
通勤手当は支給しなければならない?
労働者の通勤に要する費用は必ず会社が負担しなければならないという法律上の定めはないので、通勤手当の支給は義務ではありません。
支給の有無や金額は、基本的に会社の裁量に任されており任意で決めることができます。
交通費の一部または定額を負担することは?
支給金額に関しても雇用主側の任意で決めることができますので、通勤手当の支給額を全額ではなく「1日当たり上限1,000円まで」「1ヶ月当たり10,000円まで」など上限を設けたり、「交通費の1割を労働者負担とする」「通勤距離に関係なく一律に定額を支給する」など交通費の一部や一定の金額を決めて支給することも問題ありません。
雇用形態によって支給額を変えることは?
通常の労働者と就業の実態(職務の内容等)が同じと判断されたパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、すべての賃金を含むあらゆる待遇について不合理な待遇格差を設けることは、「パートタイム・有期雇用労働法」において禁止されています。この制度を「同一労働同一賃金」といいますが、通勤手当についても「正社員には全額支給することとし、短時間・有期雇用労働者には支給しない」というような雇用形態によって差別的な取扱いをすることは、同一労働同一賃金に反することになります。
なお、勤務日数に応じて交通費の支給方法を変えることは問題ありません。
例:「正社員には月額の定期券金額に相当する額とし、短時間労働者には日額の交通費に相当する額とする」など。
就業規則等で通勤手当の支給を定めている場合は義務
ここまで通勤手当の支給は法律上は義務付けられていないことを説明しましたが、就業規則や雇用契約書などにおいて、通勤手当を支給することを規定している場合には、支給義務が発生することを留意しなければなりません。
通勤手当を全額支給することを規定しているにもかかわらず、支給しなかったり、定められた額に満たない金額を支給した場合には、賃金の未払いとして労働基準法違反となりますので、就業規則や契約内容を確認しておく必要があります。