企業が人を雇用したときにかかる費用は、単純に給与の額だけではありません。社会保険や労働保険など給与に付随して事業主側が負担するコストがあります。具体的にどのような費用が、どのくらいかかるのでしょうか。
社会保険(健康保険料と厚生年金保険料)
狭義の社会保険と呼ばれる健康保険(医療保険)と厚生年金(年金保険)は、事業主と労働者が折半で負担します。
社会保険の金額は、標準報酬月額(通勤手当などを含めた報酬月額を等級表にあてはめたもの)に健康保険料率や厚生年金保険料率を乗じて計算します。
東京都における健康保険および厚生年金保険の料率は令和2年3月より下記のとおりです。
健康保険 | ~40歳 | 9.87% |
40歳~64歳(介護保険を含む) | 11.66% | |
厚生年金保険 | 18.300% |
労使折半ですので、この料率の1/2を通勤手当などを含めた給与の額に乗じることで、おおよその事業主負担額を算出することができます。(正確には標準報酬月額に料率を乗じるので金額は異なります。)
例えば、40歳未満の社員300,000円の給与に対して事業主が負担するおおよその社会保険料の額は、次のように計算します。
健康保険料:300,000×9.87%×1/2=14,805円
厚生年金保険料:300,000×18.300%×1/2=27,450円
合計:42,255円
労働保険(労災保険料と雇用保険料)
労働保険は、労災保険と雇用保険を総称したもので、労災保険は社員やアルバイトなど雇用形態にかかわらず一人でも従業員を雇う場合には保険料を払わなければなりません。その負担割合は全額事業主です。雇用保険は雇用保険の加入条件を満たす労働者に対して保険料を支払う必要がありますが、事業主と労働者自身がそれぞれ一定の割合で保険料を支払います。
労災保険および雇用保険は、通勤手当等を含めた給与の額に定められた次の保険料率を乗じて算出します。
労災保険料率
具体的な保険料率は事業の種類によって異なり、最高88/1000(金属鉱業等)から最低2.5/1000(金融業等)の間でそれぞれ定められており、その全額が事業主負担です。労働災害の発生率が高い業種ほど保険料率も高くなり、卸・小売業、飲食店等その他の業種は3/1000で設定されています。
雇用保険料率
業種 | 事業主負担 | 労働者負担 |
---|---|---|
一般の事業 | 6/1000 | 3/1000 |
農林水産・清酒製造業等 | 7/1000 | 4/1000 |
建設業等 | 8/1000 | 4/1000 |
例えば、卸売業で雇用される従業員の給与300,000円に対して事業主が負担する労働保険料は次のように計算します。
労災保険料:300,000×3/1000=900円
雇用保険料:300,000×6/1000=1,800円
正確には、1年間の全労働者の賃金総額(千円未満切り捨て)に保険料率を乗じ、労働者負担分雇用保険料を差し引いた金額が費用となります。
税金(源泉所得税と住民税)
よく勘違いされやすいのが、給与から天引きする源泉所得税と住民税ですが、この2つの税金に関しては全額労働者が支払うべきものですので、事業主が負担することはありません。給与から天引きすることで従業員から預かった税金を事業主が代わって納付する仕組みになっています。
料率まとめ
一般の事業で給与に対する事業主が負担分の社会保険と労働保険の料率をまとめると次のとおりです。(卸・小売業、飲食店、宿泊業等)
健康保険(介護保険を含む) | 5.83% |
厚生年金保険 | 9.15% |
労災保険 | 0.003% |
雇用保険 | 0.006% |
計 | 14.989% |
現在の料率では給与の約15%の金額を事業主が負担する計算になります。建設業や製造業においては労災保険料率が高くなりますので、事業主負担はさらに多くなります。
その他の費用
社会保険料の他にも、採用するまでに求人募集のための広告費や新人育成のための研修費、設備費、福利厚生費などのイニシャルコストやランニングコストもかかる場合があります。
また、従業員を雇用したとき・退職したときは、社会保険および雇用保険の手続きや、毎年労働保険料を計算する「労働保険申告書」や社会保険料を計算する「算定基礎届」などを提出しなければなりません。専門的な知識を必要とするためこれらの手続きを事業主自身でできない場合には、社会保険労務士に依頼しなければなりません。そのため社会保険労務士へ支払う報酬といった費用もかかります。
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